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更新日付:2023年3月2日 広報広聴課
令和5年度当初予算[臨時記者会見][2月20日]
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知事記者会見録
会見日時:令和5年2月20日月曜日 14時00分~14時45分
会見場所:第三応接室
会見者:三村知事
〇知事
【令和5年度当初予算案の概要】
令和5年度当初予算についてお手元の資料1「令和5年度当初予算案の概要」に基づきご説明申し上げます。
まず、今回の予算編成についての基本的な考え方を申し上げます。
令和5年度当初予算の編成に当たりましては、社会経済環境の急激な変化等に対応するため、地域経済の回復と外貨獲得による経済の活性化、暮らしにおける安全・安心の確保と心身の健康づくり、あらゆる分野でのデジタルによる変革の3つの視点を重視しながら、最終年度を迎える「青森県基本計画『選ばれる青森』への挑戦」の総仕上げとともに、本県の未来を支える基盤づくりに積極的に取り組むこととしました。
また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の防止と医療提供体制の確保等に向けて、引き続き万全の対応を図るとともに、安全・安心な県土づくりを目指し、頻発化・激甚化する自然災害に備えたインフラの機能強化に集中的に取り組むこととしました。
以上の結果、年間総合予算として編成しました令和5年度一般会計当初予算の規模は、7,384億円、令和4年度当初予算対比51億円、0.7パーセントの増となりました。
また、県政が直面するさまざまな課題に最大限の対応を図った上で「青森県行財政改革大綱」に基づく財政健全化努力を継続しつつ、各種財源を有効活用することにより収支均衡を堅持するとともに、県債残高につきましても着実に縮減するなど、持続可能な財政運営の継続と強靱で安定的な財政基盤の確立に向けて取り組んだところです。
【令和5年度「選ばれる青森」への挑戦推進事業の概要】
次に、令和5年度の重点施策につきまして、お手元の資料3「令和5年度『選ばれる青森』への挑戦推進事業の概要」に基づきご説明します。
まず、令和5年度の「選ばれる青森」への挑戦推進事業は、基本計画に掲げる5つの戦略プロジェクトおよび、その他の4分野の事業等を合計し、351億8千万円余となっています。
本日は、令和5年度基本計画推進事業のポイントと主な取組内容についてご説明します。
県ではこれまで、「若者や女性の県外流出」、「労働力不足」、「超高齢化時代の到来」、「平均寿命・健康寿命の延伸」といった大きな課題克服に向け、5つのプロジェクトを展開し、取り組んできたところです。この5つのプロジェクトによる取組は、例えば、農業産出額3,000億円超え、りんごの輸出額100億円超え、創業者数100人超え、移住決定者数100人超えなど着実に成果を上げ、「選ばれる青森」への確かな歩みを進めています。
しかし、その一方で、既に3年が経過したコロナ禍や、それに続く物価高などの変化は、本県が抱える課題にも大きな影響を与えています。
【「3つの視点」と「将来への10テーマ」】
そこで令和5年度は社会経済情勢の変化等に対応するための「3つの視点」を特に重視して取り組みます。
まずは何よりも「経済を回す」、とにかく“稼ぐ”ということです。経済の活性化は、あらゆる課題解決あるいは成長に必要な力の源泉です。この3年間、耐えに耐えてきた観光や販売に改めて力を入れ、各方面とのつながりを再び強化し、思いっきり稼ぎ、疲弊した経済を力強く回復していくことが大変重要であると思っています。
「暮らしを守る」では、進展する人口減少と超高齢化時代の中で顕在化してきた孤独・孤立、自殺の問題や、頻発・激甚化する災害からの安全確保、心身の健康づくりなどにもしっかりと対応します。
「DX」は、急速に進展するデジタル社会に対応し、あらゆる分野でのデジタルによる変革を進めます。
青森県をけん引してきた「攻めの農林水産業」などの取組を一層強化し、これら3つの視点により「選ばれる青森」実現への総仕上げをしていきます。
このような「3つの視点」と総仕上げに向けた取組に加えて、次なる将来をひらいていくため、「将来への10テーマ」について取り組んでいかなければいけないということで、頭出しだけではなく、具体化していきます。
さまざまな変化に対応した新たな社会構造の構築等に向けて、あらゆる分野でDXを推進していく体制の構築や、農産物等の輸出をさらに大きく拡大するための体制づくりなど、10のテーマについて、基盤を強化していきます。これはいずれも分野横断的な課題や、関係者や検討事項が多いなど、簡単にはいかないテーマですが、将来のあおもりをつくるため、関係部局が一体的に腰を据えて検討や取組を進めていくこととしています。
これらの10のテーマに対しまして、26事業、約11億8千万円を計上しています。
ここからは「3つの視点」に沿いながら、令和5年度の取組の主なものを紹介します。「将来への10テーマ」の取組についても、各視点に沿ってご説明します。
【「3つの視点」-1「経済を回す」】
1点目は「経済を回す」です。
まずは、観光です。3年間、本当に長い忍耐を強いられたわけでありますが、行動制限も緩和され、いよいよ、本格的な観光の再開が期待できる状況となってきました。この機を逃すことなく、国内外から多くの方に本県を訪ねていただき、本県の魅力を味わっていただきたいと思っています。「白神山地」と「縄文遺跡群」という2つの世界遺産を筆頭に、「アート」や「花」など、本県の持つ宝を最大限生かした誘客により、人との交流が再開した後の本格的な観光需要を取り込んでいきます。
特に、本格的に再開する外国人旅行客に本県を選んでいただくため、いよいよ今週、約3年ぶりに双方向のチャーター便を運航できることになりました「青森・ソウル線」をはじめ「青森・台北線」、国際チャーター便の再開・誘致対策を強化するともに、これらと連動した集中的な宿泊促進策など、強力なプロモーションを展開します。さらに、青森、三沢両空港からそれぞれ県内の主な観光地にスムーズに移動していただけるよう、空港二次交通体制として、経路検索サービスと連携した事前予約制乗り合いタクシーの実証運行に取り組んでいきます。これらにより、インバウンド需要を積極的に取り込み、本県観光の復活を目指します。かつての(2019年外国人延べ宿泊者数、震災前比)570パーセント(増を)、今度は必ず越えていかなければならない、そういう強い思いであります。
続いて、輸出・海外ビジネスの強化です。自分自身が行っているので肌で感じていますが、国際的に日本食材への需要は高まっています。世界に誇るわが青森県の農水産物を中心に「青森ブランド」を海外に売り込む好機となっていると感じています。そのため、昨年8月に再開したAプレミアムの海外輸送の活用も促進しながら、東南アジア・EUへの輸出拡大に向けた海外販路を持つ企業との連携強化や、台湾・香港への青森りんごのプロモーション強化に取り組み、外貨の獲得を拡大します。
続いて本県の基幹産業である農林水産業です。稼いでいくことができるよう、しっかりと支えていきます。“ふっくらやさしい食感と、ほどよい甘さ”、「はれわたり」の全国デビューと合わせて、青天の霹靂など「あおもり米」全体のブランド力のさらなる強化に取り組みます。農業は米なりという強い思いがありますし、所得が2倍になっている農業、これをさらに促進させたいという強い、強い決意があります。
また、コロナ禍に続く物価高は、肥料や飼料の高騰という形で、本県の農業生産に大きな打撃を与えています。価格高騰に左右されにくい強靭な生産体制を構築していくため、畜産自給飼料の増産や、耕種作物の飼料利用などの耕畜連携の強化、化学肥料の代替となる堆肥の高品質化などに取り組んでいきます。
続いて、「経済を回す」視点に基づく、「将来への10テーマ」の取組についてご紹介します。
一つは、「農産物等の輸出拡大基盤づくり」です。人口減少に伴う国内需要の減少と海外需要の増加に対応して、農産物等の輸出を一段と拡大していくことが非常に大事だと思っていますので、マーケットイン型の生産体制や輸出に取り組むプレーヤーの育成など、そういった基盤づくりを海外に向けても進めていきます。
また、青森県には約800㎞の海岸線があり、漁港、船だまり、漁礁等の海の段取りを丁寧に整備してきました。その上で、この「あおもりの浜」すなわち、本県の水産業を支える基盤強化に本格的に取り組みます。漁獲の減少を乗り越えて本県の水産業が再び発展していくため、増養殖などの「つくり育てる漁業」や、漁業体験観光などの「海業(うみぎょう)」のさらなる展開など、多角的な産業基盤の構築を進めていきます。
その一方で、経済を支えるための労働力の不足問題では、国外や首都圏等との人財獲得競争も予想されています。今後も一層大きな課題となっていくことが見込まれるところです。産業分野を超えた仕事の組み合わせや、さまざまな働き方を尊重した仕事と求職者の一層のマッチングを進め、女性や高齢者、障害者など多様な力が最大限生かされる体制づくりを進めていきます。
また、県出身者をはじめ県外人財も活躍する、活躍できる青森県に向けて、今年度創設した「あおもり若者定着奨学金返還支援制度」の活用を進めるほか、県出身の若者とつながり続ける仕組みの構築、農林水産分野における県外人財の受け入れ体制づくりの支援などに取り組んでいきます。UIJターン300名近くの中に100名を超えるIターンの方々がいますが、しっかりとバックアップしていくことが大切だと思っています。
続いて、「青森の縄文遺跡群」の保存・活用体制の強化です。世界に誇る本県の縄文遺跡群をしっかり保存し、地域の遺跡として未来につないでいくとともに、国内外の観光客にも長く選ばれる観光資源としてしっかりと活用される体制を強化するため、積極的な県外プロモーションや旅行商品の造成に加え、来訪者目線でのアクセス環境や遺跡施設等の受け入れ態勢充実に向けた集中的な支援を行い、遺跡群の魅力向上を加速していきます。
【「3つの視点」-2「暮らしを守る」】
「3つの視点」の2つ目は、「暮らしを守る」です。「将来への10テーマ」の取組を1番多く展開するのがこの視点です。
長らく段取りしてきた地域共生社会について、昨今、理解を得られるようになったと感じています。いよいよ2025年以降の超高齢化時代、団塊の世代が皆、75歳以上を超えることが目前に迫る中、改めて、互いにつながり、支え合う仕組みを深めていく必要があります。市町村のバックアップや担い手の充実、デジタルの効果的な活用などに取り組むとともに、自殺者等の個別データの分析により、真に必要なアプローチを把握・実践することで自殺者の減少にもつなげていきます。
ここで、新たに創設する予定の「医療・福祉職の子育て世帯移住支援金」について説明します。本制度は地域共生社会の核となる医療・福祉分野で活躍する人財を増やしながら、加速する少子化にも対応するため、子育て世帯の方々の移住に対して、国の移住支援金制度の対象とならない東京圏以外からの移住も含めて支援するものです。医師だけでなく、コ・メディカルの不足という状況が、なかなか地域共生社会の段取りをしていく上で非常に厳しい現実として、実は目の前にあります。その確保に加えて、子育て世帯の方々が安心して子育てができる青森というものをお示ししていくため、新しい制度としての提案です。
また、経済的事情等も踏まえ、ひとり親世帯については、さらに加算することとしており、例えば、お子さまが2人のひとり親世帯の場合は、最大400万円が支給されます。この医療・福祉職を希望する子育て世帯の方々に向けた移住支援は、全国に先駆けて実施するものです。地方での子育てを考え中の皆さま方、ぜひ、私たち青森の素晴らしい子育て環境の中で、地域とつながり、支え、支えられる暮らしにチャレンジしてみませんか。心よりお待ちしています。
続いて個人の人生の充実の面からも、社会の発展の面からも、県民一人ひとりが生涯健康で活躍できる基盤づくりが重要と考えています。野菜摂取量が50グラム増えたとはいえ、なかなか厳しい状況です。子どもたちの肥満の状況も解消どころか増えています。したがって、子どもの頃からの息の長い意識づくりと対策が必要であるということです。学校と家庭の両面から、食事と運動に、切れ目なく総合的にアプローチしていきます。
また、「幼児教育のさらなる質の向上」に向けて、4月に予定している「(仮称)幼児教育センター」の開設を契機として、「幼・保」の区別や公立・私立の垣根を超えた推進体制づくり、また、小学校教育とのスムーズな連携体制づくりに取り組んでいきます。
写真は大雨災害の現地の状況です。異常な気象の影響でしょうか、近年は毎年のように大きな被害をもたらす災害が発生しています。一方で、今後の人口減少や超高齢化時代の到来などを見据えると、危機管理体制を支える、自助、共助、公助のいずれにつきましても、現状のまま維持できるのか、危ぶまれる状況も予想されます。私は昨夏、それを感じた地域もありました。その中でも県民の命と財産を守り続けていくため、危機管理体制の強靭化を進めていきます。
続いて「地域脱炭素総合対策」です。2050年カーボンニュートラルの達成に向け、二酸化炭素排出量の多い「産業」「業務その他」「家庭」「運輸」の各部門の排出削減と、二酸化炭素の吸収を促進する「吸収源対策」について、総合的に取り組みます。そのうち「産業」「業務その他」部門対策では経済を回す視点も合わせながら、脱炭素を事業拡大につなげる「GX戦略策定企業」の支援や、熱需要の高い医療・福祉施設や観光・商業施設への地中熱など、「再生可能エネルギー熱利用」の導入促進などに取り組みます。
「暮らしを守る」の最後になりますが、本県の鉄道やバスなど地域公共交通につきましては、暮らしの足であるとともに県外からの誘客にとっても不可欠であると考えます。全国的な鉄道在来線の見直しなどの動きも見られることから、鉄路の維持・確保に向けて、県民向けの利用促進や、首都圏等での誘客プロモーションに取り組みます。また、広域バス路線や域内交通の確保・維持・改善など、安心して移動できる地域交通の維持・確保に向けて取り組みます。
【「3つの視点」-3「DX」】
「3つの視点」の3つ目は、「DX」です。地域の課題解決、新サービスの創出など、あらゆる場面においてデジタルの活用やDXは不可欠となっています。また、農業や観光などの本県の強みである分野をはじめ、さまざまな分野において「経済を回す」「暮らしを守る」視点による取組を、「DX」でさらに促進していくことを特に重視していきます。
そこで、令和5年度から将来のあおもりをつくる基盤強化として、「産業」「暮らし・まち」「行政」のあらゆる分野で、DXを総合的に推進していく体制の構築に取り組みます。本県の課題やニーズに即して、さらに幅広い場面でデジタル技術が有効に活用されるよう、しっかりと基盤づくりを進め、県民誰もが、便利で快適に暮らしていくことができる青森県をつくっていきたいと考えます。
そのために実施する取組内容ということで、「産業DX」ではDXを推進するための総合的な支援として、簡易なITツールの導入から本格的なDXまで、県内事業者が産業分野を問わず相談できる相談窓口を開設し、ニーズに応じてワンストップで対応するほか、先進事例等の情報発信、県内事業者とIT企業とのマッチングを進めます。また、デジタル人財の育成・確保のため、システム開発を進める人財や、セキュリティに強い人財を育成するとともに、県内IT企業と学生や首都圏人財の交流を進め、デジタル人財確保につなげていきます。さらに、生産性の向上や効果的なデータ活用を推進する観点から、建設業におけるインフラ3Dデータのクラウド利用体制の構築や、観光業における観光データの利活用に向けた研究を進めていきます。可能性がたくさんある分野だと思っています。
次に「暮らしのDX」です。日々の暮らしを支えるデジタルサービスや仕組みの実装を進めるため、暮らしやまちづくり分野におけるDXのニーズ調査を行い、県内での横展開に向けて、市町村等のデジタル実装モデルを構築します。
また、「公衆衛生DX」では、保健所業務のデジタル化や効率化を進めるほか、科学的根拠に基づく保健・医療政策立案体制の構築に向けて調査・研究を進めていきます。
そして、社会のデジタル化から誰ひとり取り残されることがないよう、体験機会の提供や、ICTサポーターの育成によって、高齢者などのデジタルデバイドを解消します。
加えて、「行政DX」として、県庁自らが先頭に立ち、行政手続きや税務のDXなど、行政サービスの品質向上に積極的に取り組んでいきます。
その他のさまざまな分野におきましても、デジタル手法を活用した取組を進めていきます。
例えば、農林水産分野では、従来から取り組んでいるスマート機械の実証・普及や、消費宣伝へのデジタル手法の導入等に加えて、「青天ナビ」によるデジタルデータを駆使したあおもり米の生産指導の強化、森林クラウドを活用した原木需給のマッチング、スマート林業の現場実装の促進等に取り組んでいきます。
他にも、文化振興や学校教育など、各分野の取組の中でデジタル技術を積極的に活用して施策を展開していきます。
【「基本計画『選ばれる青森』への挑戦」5つの戦略プロジェクト】
ここからは、これまで説明した取組以外で、主なるものについて、「基本計画『選ばれる青森』への挑戦」に掲げている5つの戦略プロジェクトに沿ってご説明します。
まずは、「『選ばれる青森』食と観光成長プロジェクト」です。
「立体観光の推進」では、航路を活用した津軽海峡交流圏や北東北周遊観光の定着に向けた取組を強化するとともに、三沢・羽田線の4便体制の維持、青森・神戸線の2便化に向けた対策に取り組んでいきます。
「観光消費の拡大」としては、観光産業において変化する観光ニーズへの対応等に向けた次世代リーダーの育成等に取り組んでいきたいと思います。
続いて、「多様なしごと創出プロジェクト」です。
「魅力ある雇用の創出」では、中小企業の事業承継支援の強化や誘致企業の人財確保の支援のほか、青森・神戸線を活用した神戸市とのビジネス交流の推進等に取り組んでいきます。
「生産性向上・働き方改革」では、DXの視点でも触れましたが、林業におけるスマート技術の現場実装の推進等に取り組んでいきます。
続いて、「『住みたいあおもり』若者・女性プロジェクト」です。
「高校生・大学生の県内定着」では、進学を希望する高校生の県内大学への進学促進に取り組むほか、全ての県立高校で、地域の理解を深める学習「あおもり創造学」に取り組むことで、自分の地域を知り、愛着を持ってもらう、ひいては残ってもらう、帰ってきてもらうことを目指していきたいと思っています。
「女性の県内定着」では、根強い仕事と家庭のジェンダーギャップの解消に取ああり組みます。
「魅力ある生活環境づくり」では、青森県立美術館版のバレエ「アレコ」の制作にチャレンジするほか、不登校児童生徒への学習提供体制づくりに取り組んでいきたいと思っています。
結婚・子育て支援としては、昨年10月に運用を開始したAIマッチングシステム「AI(あい)であう」の利用促進や、結婚ムーブメントの創出等に取り組んでいきます。
次は、「未来へつなぐ『地域のゆりかご』プロジェクト」です。
本年12月、世界自然遺産登録から30周年となる白神山地について、改めてその価値を広く普及する記念事業に取り組んでいきます。
また、奥津軽いまべつ駅の利活用促進や青い森鉄道の需要の開拓・拡大などに取り組んでいきます。
5つのプロジェクトの最後は「健康ライフ実現プロジェクト」です。
がん検診を受診しやすい環境づくりに取り組むほか、県民の運動や食生活の改善に向けた取組などを展開していきます。
続いて地域県民局の主な取組についてご説明します。
・東青地域では、大学やNPOが関わる地域づくりの促進
・中南地域では、りんご高密植わい化栽培の導入促進
・三八地域では、職域の連携による働く人の健康づくりの推進
・西北地域では、リモート技術を活用した肉用牛生産の推進
・上北地域では、持続可能な水田農業の推進
・下北地域では、地域ぐるみで関係人口を受け入れる体制づくり
など、各県民局がそれぞれの地域の課題を克服し、強みを磨き上げるための事業をそれぞれの必要性に合わせて進めます。
また、引き続き、各市町村の総合戦略に基づく人口減少対策や「青森県型地域共生社会」に関する取組を強力に支援するため、元気な地域づくり支援事業費補助3億円を確保しています。
社会経済情勢が目まぐるしく変化する中にあっても、「『選ばれる青森』への挑戦」の本懐が変わることはありません。「オールあおもりで、確かな未来へ!」そういった思いで、この予算案を編成したところであります。
説明は以上です。
【質疑応答】
〇記者
知事にとって最後の予算編成となり、査定終了後の所感で「驚くような提案があった」と話していましたが、それは今回の予算案に盛り込まれたのでしょうか。6月28日で退任するため、執行者は次の知事になりますが、予算案にはどのような思いを込められたのかを教えてください。
また、最後の予算を一言で表すとしたら何予算になりますか。
〇知事
6月28日までの任期ですので、県として初動から進めていかなければならない。そのための段取りをしていく必要があると考えています。
実際の段取りはまだ決まっていませんが、新しい知事として、予算にさまざまな考え方を取り入れていくのは9月補正以降になり、年の暮れぐらいにならないとその予算執行はできないと思われます。
そのため、6月で任期満了となりますが、基本的に自分の編成した予算の中で「青森県基本計画『選ばれる青森』への挑戦」を進められるところまで進めた上で、次につないでいくことになると思っています。
そして「将来への10テーマ」については1年、2年で、ということではなく、未来に向けて長く取り組んでいかなければならないものですので、今回の予算を一言で言うと「『確かな未来』創生予算」とさせていただきます。
この20年間は、行財政改革も含めて、本県のいろいろな基盤に水を流し、土を耕して、といった段取りをして整えてきた20年間だったと思っています。その中で、攻めの農林水産業、観光戦略、創業・起業など、とても伸びたものもありましたが、実際は、成果が出る前にこうした段取りを整えるということを、しっかりと取り組んできました。さらに、「将来への10テーマ」についても、この先やらなければならないことに着手することで、将来に引き継ぎやすいようにしました。
あっと驚いた事業というのは、「医療・福祉職の子育て世帯移住支援金」もそうですが、ただお金を配りますというだけではなく、県民が(青森県で)生きていくのはどういうことかをしっかりと考え、検討した事業ということです。皆が周りから守られ、経済力や仕事があって地域ともつながって生きていけるようにするということをずっと大事にしてさまざまな取組に反映させてきたという思いがあります。
例えば海外向けの観光戦略でも、ただ現地に行って誘客をするだけではなく、訪れた人とどのようにつながり、関係人口として増やしていくかを考えてきました。
海外でも国内でも複層的展開ということを実施してきました。
輸出においても、ただ輸出をするのではなく、相手と信頼関係を構築して、そこからさらに発展させるということをやってきました。
丁寧に進めてきた基盤整備が整ったときに、成果として出るわけです。
医師確保の面においても、単に、医学部に行ったら修学資金を支援するので、将来、青森県に就職してくださいというわけではなく、キャリアデザインをしますと宣言し、中学校・高校や大学を訪問して、なぜ私たちが君たちと命を守る仕事をしたいのかを伝えていくことで、結果として合格者は増え、研修医はかつての約2倍になりました。
そのような意味において、「将来への10テーマ」はよく考えられていると感じます。このようなことをどんどんやらせてくれた議会や県庁職員に感謝しています。
〇記者
今回の予算で7年連続の収支均衡と県債残高の8千億円台を達成する見込みですが、財政健全化を進めてきたことを含め、それに対しての考えを聞かせてください。
〇知事
20年前の就任時、財政状況が破綻に近いような状態にあり、多大な後年度負担も見えている中で、(財政改革に取り組むため)延べ1,100を超える団体に説明会を行い、時には私や県庁職員が罵倒され、一緒に頭を下げるなど、とてつもない苦労をしました。
青森県を絶対に破綻状態にしてはいけないということで財政改革を進めてきましたが、その一方で産業政策も次々に進めてきました。経費をかけず情熱をかけようと、職員がいろいろアイデアを出してくれました。そうして財政再建は着実に進めてきました。
収支均衡達成間近と思われた時には、東日本大震災がありました。震災への対応も、あそこまで財政状況を整えておかなければ、対応できなかったと思っています。
臨時財政対策債以外について、県債残高を自分で減らせる部分においては(ピーク時から)約6,400億円減らし、臨時財政対策債を含めると約4,200億円減らしました。
しかし、まだ道半ば、収支均衡は達成しましたが、令和5年度の県債残高見込みは約8,800億円と年間の予算約7,000億円よりまだ多いです。何かあった時に対応できるようにするには、県債残高は半分くらいまで減らさないと厳しいと思います。今後、さまざまなことが起こり得る日本の状況を考えると、引き続き丁寧に財政健全化を進めていく必要がありますが、少なくとも収支均衡で引き継げることについては、皆で頑張ったなと思っています。一番協力していただいた県民や議会には、ここまでやりましたと今回もそのような報告をしたいと思っています。
〇記者
任期満了後、編成した本格予算案を、どなたかが執行していかなければならないですが、どのような方に執行してほしいですか。
〇知事
恐らく、7月に(次の知事による)所信表明があり、補正予算は9月になり、議会が終わるのは10月中旬になることを考えると、その執行は12月になります。そのため、4月から12月までは今回の予算案の方向で動くことになると思います。新たな知事の考えが予算に含まれるのは1月から3月なので、来年度中はこの予算案で執行するのではないかと思います。
〇記者
国際定期便の再開に向けた取組、それから農林水産業分野への知事の思いを聞かせてください。
〇知事
国際定期便については、早く定期便に戻したいという思いがあります。また、青森県はただ観光の窓口になるのではなく、海外に向けてはっきりとローカル・トゥ・ローカルでつなげていくという考えです。
台湾のものづくり団体や輸出入団体などからも、早く商売をしようと言われています。台湾の教育相から感謝状をいただきましたが、台湾の教育関係者から、青森県に行くと子どもたちにものすごく刺激があるので青森県に来たい、と言っていただいています。ローカル・トゥ・ローカルからローカル・トゥ・ワールドを具体化し、観光や物販・経済だけなく、カルチャーも含めてつなげていくことが非常に重要だと思っています。
「攻めの農林水産業」については、農業所得が20年前と比べ、2倍を超えるようになりました。だから若い方々が来てくれています。自分自身の悲願とするものは、食と命と文化のゆりかごである農山漁村集落の維持。本集落という意味ですが、これが絶対に維持されてこそ青森という存在が守られていくものだと思っています。
先ほどご説明した医療・福祉人財の確保のように、「攻めの農林水産業」でも、今まで別々にあったものを上手くつないでいきながらお互いが支えていくという形をつくってきました。「攻めの農林水産業」は、経済活動に見えながら、実は、地域を守るという宣言なのです。
単に農業経済を良くするのではなく、地域を守り、これからも持続していく、加えてそこにDX、医療・福祉関係などをどんどん絡めることによって、絶対にここで生きていける、縄文のように絶対的にいつまでも続く集落群がそれぞれある青森にしていくこと、ここまでを目指すのが「攻めの農林水産業」だ、というのを20年前に提案して、やっと地域共生や地域経営体という言葉にたどり着きました。
ものを売ることが「攻めの農林水産業」ではなく、全体として地域を守るためにやっていたということを理解していただき、今後、さらに発展形のアイデアを出して進めてもらえたら大変嬉しいと思っています。
【令和5年度当初予算案の概要】
令和5年度当初予算についてお手元の資料1「令和5年度当初予算案の概要」に基づきご説明申し上げます。
まず、今回の予算編成についての基本的な考え方を申し上げます。
令和5年度当初予算の編成に当たりましては、社会経済環境の急激な変化等に対応するため、地域経済の回復と外貨獲得による経済の活性化、暮らしにおける安全・安心の確保と心身の健康づくり、あらゆる分野でのデジタルによる変革の3つの視点を重視しながら、最終年度を迎える「青森県基本計画『選ばれる青森』への挑戦」の総仕上げとともに、本県の未来を支える基盤づくりに積極的に取り組むこととしました。
また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の防止と医療提供体制の確保等に向けて、引き続き万全の対応を図るとともに、安全・安心な県土づくりを目指し、頻発化・激甚化する自然災害に備えたインフラの機能強化に集中的に取り組むこととしました。
以上の結果、年間総合予算として編成しました令和5年度一般会計当初予算の規模は、7,384億円、令和4年度当初予算対比51億円、0.7パーセントの増となりました。
また、県政が直面するさまざまな課題に最大限の対応を図った上で「青森県行財政改革大綱」に基づく財政健全化努力を継続しつつ、各種財源を有効活用することにより収支均衡を堅持するとともに、県債残高につきましても着実に縮減するなど、持続可能な財政運営の継続と強靱で安定的な財政基盤の確立に向けて取り組んだところです。
【令和5年度「選ばれる青森」への挑戦推進事業の概要】
次に、令和5年度の重点施策につきまして、お手元の資料3「令和5年度『選ばれる青森』への挑戦推進事業の概要」に基づきご説明します。
まず、令和5年度の「選ばれる青森」への挑戦推進事業は、基本計画に掲げる5つの戦略プロジェクトおよび、その他の4分野の事業等を合計し、351億8千万円余となっています。
本日は、令和5年度基本計画推進事業のポイントと主な取組内容についてご説明します。
県ではこれまで、「若者や女性の県外流出」、「労働力不足」、「超高齢化時代の到来」、「平均寿命・健康寿命の延伸」といった大きな課題克服に向け、5つのプロジェクトを展開し、取り組んできたところです。この5つのプロジェクトによる取組は、例えば、農業産出額3,000億円超え、りんごの輸出額100億円超え、創業者数100人超え、移住決定者数100人超えなど着実に成果を上げ、「選ばれる青森」への確かな歩みを進めています。
しかし、その一方で、既に3年が経過したコロナ禍や、それに続く物価高などの変化は、本県が抱える課題にも大きな影響を与えています。
【「3つの視点」と「将来への10テーマ」】
そこで令和5年度は社会経済情勢の変化等に対応するための「3つの視点」を特に重視して取り組みます。
まずは何よりも「経済を回す」、とにかく“稼ぐ”ということです。経済の活性化は、あらゆる課題解決あるいは成長に必要な力の源泉です。この3年間、耐えに耐えてきた観光や販売に改めて力を入れ、各方面とのつながりを再び強化し、思いっきり稼ぎ、疲弊した経済を力強く回復していくことが大変重要であると思っています。
「暮らしを守る」では、進展する人口減少と超高齢化時代の中で顕在化してきた孤独・孤立、自殺の問題や、頻発・激甚化する災害からの安全確保、心身の健康づくりなどにもしっかりと対応します。
「DX」は、急速に進展するデジタル社会に対応し、あらゆる分野でのデジタルによる変革を進めます。
青森県をけん引してきた「攻めの農林水産業」などの取組を一層強化し、これら3つの視点により「選ばれる青森」実現への総仕上げをしていきます。
このような「3つの視点」と総仕上げに向けた取組に加えて、次なる将来をひらいていくため、「将来への10テーマ」について取り組んでいかなければいけないということで、頭出しだけではなく、具体化していきます。
さまざまな変化に対応した新たな社会構造の構築等に向けて、あらゆる分野でDXを推進していく体制の構築や、農産物等の輸出をさらに大きく拡大するための体制づくりなど、10のテーマについて、基盤を強化していきます。これはいずれも分野横断的な課題や、関係者や検討事項が多いなど、簡単にはいかないテーマですが、将来のあおもりをつくるため、関係部局が一体的に腰を据えて検討や取組を進めていくこととしています。
これらの10のテーマに対しまして、26事業、約11億8千万円を計上しています。
ここからは「3つの視点」に沿いながら、令和5年度の取組の主なものを紹介します。「将来への10テーマ」の取組についても、各視点に沿ってご説明します。
【「3つの視点」-1「経済を回す」】
1点目は「経済を回す」です。
まずは、観光です。3年間、本当に長い忍耐を強いられたわけでありますが、行動制限も緩和され、いよいよ、本格的な観光の再開が期待できる状況となってきました。この機を逃すことなく、国内外から多くの方に本県を訪ねていただき、本県の魅力を味わっていただきたいと思っています。「白神山地」と「縄文遺跡群」という2つの世界遺産を筆頭に、「アート」や「花」など、本県の持つ宝を最大限生かした誘客により、人との交流が再開した後の本格的な観光需要を取り込んでいきます。
特に、本格的に再開する外国人旅行客に本県を選んでいただくため、いよいよ今週、約3年ぶりに双方向のチャーター便を運航できることになりました「青森・ソウル線」をはじめ「青森・台北線」、国際チャーター便の再開・誘致対策を強化するともに、これらと連動した集中的な宿泊促進策など、強力なプロモーションを展開します。さらに、青森、三沢両空港からそれぞれ県内の主な観光地にスムーズに移動していただけるよう、空港二次交通体制として、経路検索サービスと連携した事前予約制乗り合いタクシーの実証運行に取り組んでいきます。これらにより、インバウンド需要を積極的に取り込み、本県観光の復活を目指します。かつての(2019年外国人延べ宿泊者数、震災前比)570パーセント(増を)、今度は必ず越えていかなければならない、そういう強い思いであります。
続いて、輸出・海外ビジネスの強化です。自分自身が行っているので肌で感じていますが、国際的に日本食材への需要は高まっています。世界に誇るわが青森県の農水産物を中心に「青森ブランド」を海外に売り込む好機となっていると感じています。そのため、昨年8月に再開したAプレミアムの海外輸送の活用も促進しながら、東南アジア・EUへの輸出拡大に向けた海外販路を持つ企業との連携強化や、台湾・香港への青森りんごのプロモーション強化に取り組み、外貨の獲得を拡大します。
続いて本県の基幹産業である農林水産業です。稼いでいくことができるよう、しっかりと支えていきます。“ふっくらやさしい食感と、ほどよい甘さ”、「はれわたり」の全国デビューと合わせて、青天の霹靂など「あおもり米」全体のブランド力のさらなる強化に取り組みます。農業は米なりという強い思いがありますし、所得が2倍になっている農業、これをさらに促進させたいという強い、強い決意があります。
また、コロナ禍に続く物価高は、肥料や飼料の高騰という形で、本県の農業生産に大きな打撃を与えています。価格高騰に左右されにくい強靭な生産体制を構築していくため、畜産自給飼料の増産や、耕種作物の飼料利用などの耕畜連携の強化、化学肥料の代替となる堆肥の高品質化などに取り組んでいきます。
続いて、「経済を回す」視点に基づく、「将来への10テーマ」の取組についてご紹介します。
一つは、「農産物等の輸出拡大基盤づくり」です。人口減少に伴う国内需要の減少と海外需要の増加に対応して、農産物等の輸出を一段と拡大していくことが非常に大事だと思っていますので、マーケットイン型の生産体制や輸出に取り組むプレーヤーの育成など、そういった基盤づくりを海外に向けても進めていきます。
また、青森県には約800㎞の海岸線があり、漁港、船だまり、漁礁等の海の段取りを丁寧に整備してきました。その上で、この「あおもりの浜」すなわち、本県の水産業を支える基盤強化に本格的に取り組みます。漁獲の減少を乗り越えて本県の水産業が再び発展していくため、増養殖などの「つくり育てる漁業」や、漁業体験観光などの「海業(うみぎょう)」のさらなる展開など、多角的な産業基盤の構築を進めていきます。
その一方で、経済を支えるための労働力の不足問題では、国外や首都圏等との人財獲得競争も予想されています。今後も一層大きな課題となっていくことが見込まれるところです。産業分野を超えた仕事の組み合わせや、さまざまな働き方を尊重した仕事と求職者の一層のマッチングを進め、女性や高齢者、障害者など多様な力が最大限生かされる体制づくりを進めていきます。
また、県出身者をはじめ県外人財も活躍する、活躍できる青森県に向けて、今年度創設した「あおもり若者定着奨学金返還支援制度」の活用を進めるほか、県出身の若者とつながり続ける仕組みの構築、農林水産分野における県外人財の受け入れ体制づくりの支援などに取り組んでいきます。UIJターン300名近くの中に100名を超えるIターンの方々がいますが、しっかりとバックアップしていくことが大切だと思っています。
続いて、「青森の縄文遺跡群」の保存・活用体制の強化です。世界に誇る本県の縄文遺跡群をしっかり保存し、地域の遺跡として未来につないでいくとともに、国内外の観光客にも長く選ばれる観光資源としてしっかりと活用される体制を強化するため、積極的な県外プロモーションや旅行商品の造成に加え、来訪者目線でのアクセス環境や遺跡施設等の受け入れ態勢充実に向けた集中的な支援を行い、遺跡群の魅力向上を加速していきます。
【「3つの視点」-2「暮らしを守る」】
「3つの視点」の2つ目は、「暮らしを守る」です。「将来への10テーマ」の取組を1番多く展開するのがこの視点です。
長らく段取りしてきた地域共生社会について、昨今、理解を得られるようになったと感じています。いよいよ2025年以降の超高齢化時代、団塊の世代が皆、75歳以上を超えることが目前に迫る中、改めて、互いにつながり、支え合う仕組みを深めていく必要があります。市町村のバックアップや担い手の充実、デジタルの効果的な活用などに取り組むとともに、自殺者等の個別データの分析により、真に必要なアプローチを把握・実践することで自殺者の減少にもつなげていきます。
ここで、新たに創設する予定の「医療・福祉職の子育て世帯移住支援金」について説明します。本制度は地域共生社会の核となる医療・福祉分野で活躍する人財を増やしながら、加速する少子化にも対応するため、子育て世帯の方々の移住に対して、国の移住支援金制度の対象とならない東京圏以外からの移住も含めて支援するものです。医師だけでなく、コ・メディカルの不足という状況が、なかなか地域共生社会の段取りをしていく上で非常に厳しい現実として、実は目の前にあります。その確保に加えて、子育て世帯の方々が安心して子育てができる青森というものをお示ししていくため、新しい制度としての提案です。
また、経済的事情等も踏まえ、ひとり親世帯については、さらに加算することとしており、例えば、お子さまが2人のひとり親世帯の場合は、最大400万円が支給されます。この医療・福祉職を希望する子育て世帯の方々に向けた移住支援は、全国に先駆けて実施するものです。地方での子育てを考え中の皆さま方、ぜひ、私たち青森の素晴らしい子育て環境の中で、地域とつながり、支え、支えられる暮らしにチャレンジしてみませんか。心よりお待ちしています。
続いて個人の人生の充実の面からも、社会の発展の面からも、県民一人ひとりが生涯健康で活躍できる基盤づくりが重要と考えています。野菜摂取量が50グラム増えたとはいえ、なかなか厳しい状況です。子どもたちの肥満の状況も解消どころか増えています。したがって、子どもの頃からの息の長い意識づくりと対策が必要であるということです。学校と家庭の両面から、食事と運動に、切れ目なく総合的にアプローチしていきます。
また、「幼児教育のさらなる質の向上」に向けて、4月に予定している「(仮称)幼児教育センター」の開設を契機として、「幼・保」の区別や公立・私立の垣根を超えた推進体制づくり、また、小学校教育とのスムーズな連携体制づくりに取り組んでいきます。
写真は大雨災害の現地の状況です。異常な気象の影響でしょうか、近年は毎年のように大きな被害をもたらす災害が発生しています。一方で、今後の人口減少や超高齢化時代の到来などを見据えると、危機管理体制を支える、自助、共助、公助のいずれにつきましても、現状のまま維持できるのか、危ぶまれる状況も予想されます。私は昨夏、それを感じた地域もありました。その中でも県民の命と財産を守り続けていくため、危機管理体制の強靭化を進めていきます。
続いて「地域脱炭素総合対策」です。2050年カーボンニュートラルの達成に向け、二酸化炭素排出量の多い「産業」「業務その他」「家庭」「運輸」の各部門の排出削減と、二酸化炭素の吸収を促進する「吸収源対策」について、総合的に取り組みます。そのうち「産業」「業務その他」部門対策では経済を回す視点も合わせながら、脱炭素を事業拡大につなげる「GX戦略策定企業」の支援や、熱需要の高い医療・福祉施設や観光・商業施設への地中熱など、「再生可能エネルギー熱利用」の導入促進などに取り組みます。
「暮らしを守る」の最後になりますが、本県の鉄道やバスなど地域公共交通につきましては、暮らしの足であるとともに県外からの誘客にとっても不可欠であると考えます。全国的な鉄道在来線の見直しなどの動きも見られることから、鉄路の維持・確保に向けて、県民向けの利用促進や、首都圏等での誘客プロモーションに取り組みます。また、広域バス路線や域内交通の確保・維持・改善など、安心して移動できる地域交通の維持・確保に向けて取り組みます。
【「3つの視点」-3「DX」】
「3つの視点」の3つ目は、「DX」です。地域の課題解決、新サービスの創出など、あらゆる場面においてデジタルの活用やDXは不可欠となっています。また、農業や観光などの本県の強みである分野をはじめ、さまざまな分野において「経済を回す」「暮らしを守る」視点による取組を、「DX」でさらに促進していくことを特に重視していきます。
そこで、令和5年度から将来のあおもりをつくる基盤強化として、「産業」「暮らし・まち」「行政」のあらゆる分野で、DXを総合的に推進していく体制の構築に取り組みます。本県の課題やニーズに即して、さらに幅広い場面でデジタル技術が有効に活用されるよう、しっかりと基盤づくりを進め、県民誰もが、便利で快適に暮らしていくことができる青森県をつくっていきたいと考えます。
そのために実施する取組内容ということで、「産業DX」ではDXを推進するための総合的な支援として、簡易なITツールの導入から本格的なDXまで、県内事業者が産業分野を問わず相談できる相談窓口を開設し、ニーズに応じてワンストップで対応するほか、先進事例等の情報発信、県内事業者とIT企業とのマッチングを進めます。また、デジタル人財の育成・確保のため、システム開発を進める人財や、セキュリティに強い人財を育成するとともに、県内IT企業と学生や首都圏人財の交流を進め、デジタル人財確保につなげていきます。さらに、生産性の向上や効果的なデータ活用を推進する観点から、建設業におけるインフラ3Dデータのクラウド利用体制の構築や、観光業における観光データの利活用に向けた研究を進めていきます。可能性がたくさんある分野だと思っています。
次に「暮らしのDX」です。日々の暮らしを支えるデジタルサービスや仕組みの実装を進めるため、暮らしやまちづくり分野におけるDXのニーズ調査を行い、県内での横展開に向けて、市町村等のデジタル実装モデルを構築します。
また、「公衆衛生DX」では、保健所業務のデジタル化や効率化を進めるほか、科学的根拠に基づく保健・医療政策立案体制の構築に向けて調査・研究を進めていきます。
そして、社会のデジタル化から誰ひとり取り残されることがないよう、体験機会の提供や、ICTサポーターの育成によって、高齢者などのデジタルデバイドを解消します。
加えて、「行政DX」として、県庁自らが先頭に立ち、行政手続きや税務のDXなど、行政サービスの品質向上に積極的に取り組んでいきます。
その他のさまざまな分野におきましても、デジタル手法を活用した取組を進めていきます。
例えば、農林水産分野では、従来から取り組んでいるスマート機械の実証・普及や、消費宣伝へのデジタル手法の導入等に加えて、「青天ナビ」によるデジタルデータを駆使したあおもり米の生産指導の強化、森林クラウドを活用した原木需給のマッチング、スマート林業の現場実装の促進等に取り組んでいきます。
他にも、文化振興や学校教育など、各分野の取組の中でデジタル技術を積極的に活用して施策を展開していきます。
【「基本計画『選ばれる青森』への挑戦」5つの戦略プロジェクト】
ここからは、これまで説明した取組以外で、主なるものについて、「基本計画『選ばれる青森』への挑戦」に掲げている5つの戦略プロジェクトに沿ってご説明します。
まずは、「『選ばれる青森』食と観光成長プロジェクト」です。
「立体観光の推進」では、航路を活用した津軽海峡交流圏や北東北周遊観光の定着に向けた取組を強化するとともに、三沢・羽田線の4便体制の維持、青森・神戸線の2便化に向けた対策に取り組んでいきます。
「観光消費の拡大」としては、観光産業において変化する観光ニーズへの対応等に向けた次世代リーダーの育成等に取り組んでいきたいと思います。
続いて、「多様なしごと創出プロジェクト」です。
「魅力ある雇用の創出」では、中小企業の事業承継支援の強化や誘致企業の人財確保の支援のほか、青森・神戸線を活用した神戸市とのビジネス交流の推進等に取り組んでいきます。
「生産性向上・働き方改革」では、DXの視点でも触れましたが、林業におけるスマート技術の現場実装の推進等に取り組んでいきます。
続いて、「『住みたいあおもり』若者・女性プロジェクト」です。
「高校生・大学生の県内定着」では、進学を希望する高校生の県内大学への進学促進に取り組むほか、全ての県立高校で、地域の理解を深める学習「あおもり創造学」に取り組むことで、自分の地域を知り、愛着を持ってもらう、ひいては残ってもらう、帰ってきてもらうことを目指していきたいと思っています。
「女性の県内定着」では、根強い仕事と家庭のジェンダーギャップの解消に取ああり組みます。
「魅力ある生活環境づくり」では、青森県立美術館版のバレエ「アレコ」の制作にチャレンジするほか、不登校児童生徒への学習提供体制づくりに取り組んでいきたいと思っています。
結婚・子育て支援としては、昨年10月に運用を開始したAIマッチングシステム「AI(あい)であう」の利用促進や、結婚ムーブメントの創出等に取り組んでいきます。
次は、「未来へつなぐ『地域のゆりかご』プロジェクト」です。
本年12月、世界自然遺産登録から30周年となる白神山地について、改めてその価値を広く普及する記念事業に取り組んでいきます。
また、奥津軽いまべつ駅の利活用促進や青い森鉄道の需要の開拓・拡大などに取り組んでいきます。
5つのプロジェクトの最後は「健康ライフ実現プロジェクト」です。
がん検診を受診しやすい環境づくりに取り組むほか、県民の運動や食生活の改善に向けた取組などを展開していきます。
続いて地域県民局の主な取組についてご説明します。
・東青地域では、大学やNPOが関わる地域づくりの促進
・中南地域では、りんご高密植わい化栽培の導入促進
・三八地域では、職域の連携による働く人の健康づくりの推進
・西北地域では、リモート技術を活用した肉用牛生産の推進
・上北地域では、持続可能な水田農業の推進
・下北地域では、地域ぐるみで関係人口を受け入れる体制づくり
など、各県民局がそれぞれの地域の課題を克服し、強みを磨き上げるための事業をそれぞれの必要性に合わせて進めます。
また、引き続き、各市町村の総合戦略に基づく人口減少対策や「青森県型地域共生社会」に関する取組を強力に支援するため、元気な地域づくり支援事業費補助3億円を確保しています。
社会経済情勢が目まぐるしく変化する中にあっても、「『選ばれる青森』への挑戦」の本懐が変わることはありません。「オールあおもりで、確かな未来へ!」そういった思いで、この予算案を編成したところであります。
説明は以上です。
【質疑応答】
〇記者
知事にとって最後の予算編成となり、査定終了後の所感で「驚くような提案があった」と話していましたが、それは今回の予算案に盛り込まれたのでしょうか。6月28日で退任するため、執行者は次の知事になりますが、予算案にはどのような思いを込められたのかを教えてください。
また、最後の予算を一言で表すとしたら何予算になりますか。
〇知事
6月28日までの任期ですので、県として初動から進めていかなければならない。そのための段取りをしていく必要があると考えています。
実際の段取りはまだ決まっていませんが、新しい知事として、予算にさまざまな考え方を取り入れていくのは9月補正以降になり、年の暮れぐらいにならないとその予算執行はできないと思われます。
そのため、6月で任期満了となりますが、基本的に自分の編成した予算の中で「青森県基本計画『選ばれる青森』への挑戦」を進められるところまで進めた上で、次につないでいくことになると思っています。
そして「将来への10テーマ」については1年、2年で、ということではなく、未来に向けて長く取り組んでいかなければならないものですので、今回の予算を一言で言うと「『確かな未来』創生予算」とさせていただきます。
この20年間は、行財政改革も含めて、本県のいろいろな基盤に水を流し、土を耕して、といった段取りをして整えてきた20年間だったと思っています。その中で、攻めの農林水産業、観光戦略、創業・起業など、とても伸びたものもありましたが、実際は、成果が出る前にこうした段取りを整えるということを、しっかりと取り組んできました。さらに、「将来への10テーマ」についても、この先やらなければならないことに着手することで、将来に引き継ぎやすいようにしました。
あっと驚いた事業というのは、「医療・福祉職の子育て世帯移住支援金」もそうですが、ただお金を配りますというだけではなく、県民が(青森県で)生きていくのはどういうことかをしっかりと考え、検討した事業ということです。皆が周りから守られ、経済力や仕事があって地域ともつながって生きていけるようにするということをずっと大事にしてさまざまな取組に反映させてきたという思いがあります。
例えば海外向けの観光戦略でも、ただ現地に行って誘客をするだけではなく、訪れた人とどのようにつながり、関係人口として増やしていくかを考えてきました。
海外でも国内でも複層的展開ということを実施してきました。
輸出においても、ただ輸出をするのではなく、相手と信頼関係を構築して、そこからさらに発展させるということをやってきました。
丁寧に進めてきた基盤整備が整ったときに、成果として出るわけです。
医師確保の面においても、単に、医学部に行ったら修学資金を支援するので、将来、青森県に就職してくださいというわけではなく、キャリアデザインをしますと宣言し、中学校・高校や大学を訪問して、なぜ私たちが君たちと命を守る仕事をしたいのかを伝えていくことで、結果として合格者は増え、研修医はかつての約2倍になりました。
そのような意味において、「将来への10テーマ」はよく考えられていると感じます。このようなことをどんどんやらせてくれた議会や県庁職員に感謝しています。
〇記者
今回の予算で7年連続の収支均衡と県債残高の8千億円台を達成する見込みですが、財政健全化を進めてきたことを含め、それに対しての考えを聞かせてください。
〇知事
20年前の就任時、財政状況が破綻に近いような状態にあり、多大な後年度負担も見えている中で、(財政改革に取り組むため)延べ1,100を超える団体に説明会を行い、時には私や県庁職員が罵倒され、一緒に頭を下げるなど、とてつもない苦労をしました。
青森県を絶対に破綻状態にしてはいけないということで財政改革を進めてきましたが、その一方で産業政策も次々に進めてきました。経費をかけず情熱をかけようと、職員がいろいろアイデアを出してくれました。そうして財政再建は着実に進めてきました。
収支均衡達成間近と思われた時には、東日本大震災がありました。震災への対応も、あそこまで財政状況を整えておかなければ、対応できなかったと思っています。
臨時財政対策債以外について、県債残高を自分で減らせる部分においては(ピーク時から)約6,400億円減らし、臨時財政対策債を含めると約4,200億円減らしました。
しかし、まだ道半ば、収支均衡は達成しましたが、令和5年度の県債残高見込みは約8,800億円と年間の予算約7,000億円よりまだ多いです。何かあった時に対応できるようにするには、県債残高は半分くらいまで減らさないと厳しいと思います。今後、さまざまなことが起こり得る日本の状況を考えると、引き続き丁寧に財政健全化を進めていく必要がありますが、少なくとも収支均衡で引き継げることについては、皆で頑張ったなと思っています。一番協力していただいた県民や議会には、ここまでやりましたと今回もそのような報告をしたいと思っています。
〇記者
任期満了後、編成した本格予算案を、どなたかが執行していかなければならないですが、どのような方に執行してほしいですか。
〇知事
恐らく、7月に(次の知事による)所信表明があり、補正予算は9月になり、議会が終わるのは10月中旬になることを考えると、その執行は12月になります。そのため、4月から12月までは今回の予算案の方向で動くことになると思います。新たな知事の考えが予算に含まれるのは1月から3月なので、来年度中はこの予算案で執行するのではないかと思います。
〇記者
国際定期便の再開に向けた取組、それから農林水産業分野への知事の思いを聞かせてください。
〇知事
国際定期便については、早く定期便に戻したいという思いがあります。また、青森県はただ観光の窓口になるのではなく、海外に向けてはっきりとローカル・トゥ・ローカルでつなげていくという考えです。
台湾のものづくり団体や輸出入団体などからも、早く商売をしようと言われています。台湾の教育相から感謝状をいただきましたが、台湾の教育関係者から、青森県に行くと子どもたちにものすごく刺激があるので青森県に来たい、と言っていただいています。ローカル・トゥ・ローカルからローカル・トゥ・ワールドを具体化し、観光や物販・経済だけなく、カルチャーも含めてつなげていくことが非常に重要だと思っています。
「攻めの農林水産業」については、農業所得が20年前と比べ、2倍を超えるようになりました。だから若い方々が来てくれています。自分自身の悲願とするものは、食と命と文化のゆりかごである農山漁村集落の維持。本集落という意味ですが、これが絶対に維持されてこそ青森という存在が守られていくものだと思っています。
先ほどご説明した医療・福祉人財の確保のように、「攻めの農林水産業」でも、今まで別々にあったものを上手くつないでいきながらお互いが支えていくという形をつくってきました。「攻めの農林水産業」は、経済活動に見えながら、実は、地域を守るという宣言なのです。
単に農業経済を良くするのではなく、地域を守り、これからも持続していく、加えてそこにDX、医療・福祉関係などをどんどん絡めることによって、絶対にここで生きていける、縄文のように絶対的にいつまでも続く集落群がそれぞれある青森にしていくこと、ここまでを目指すのが「攻めの農林水産業」だ、というのを20年前に提案して、やっと地域共生や地域経営体という言葉にたどり着きました。
ものを売ることが「攻めの農林水産業」ではなく、全体として地域を守るためにやっていたということを理解していただき、今後、さらに発展形のアイデアを出して進めてもらえたら大変嬉しいと思っています。
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