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更新日付:2025年2月21日 財政課
第321回定例会提出議案知事説明要旨(令和7年2月)
本日ここに、県議会第三百二十一回定例会が開会され、令和七年度当初予算案をはじめ各般にわたる議案について御審議いただくに当たり、県政運営に関する基本的な方針について申し上げたいと思います。
「青森新時代の挑戦」
県民の皆様にとって、青森県がすばらしい郷土であると再認識いただくとともに、全国に、世界に誇れる青森県を実現していく。県民の皆様とともに私たちは挑戦していきます。
私は知事就任以来、県民の皆様の声に真摯に耳を傾けることを第一に県政運営を行ってきました。
これまで県内各地で実施してきた県民対話集会「#あおばな」は通算百回を超えました。働き盛りの世代から高齢者の方、さらには小学生から高校生など幅広い年代の方々と、そして、農林水産、建設、観光、医療、福祉、地域づくり、本県にゆかりのある県外団体など、様々な仕事や活動をされている皆様と膝を突き合わせ、今直面している足元の課題から未来の展望まで、いろいろなお話をさせていただきました。
私は、県民の皆様の生の声から本質的な課題を見いだすことを政策立案において特に重視しています。また、そういった課題に対し、外部の専門家を含めた様々な御意見等も取り入れ、閉塞感を打破するための着想を得るというプロセスも重要であると考えています。
「#あおばな」のみならず、こども・子育て政策においては、令和五年八月に青森県こども未来県民会議を立ち上げ、幼いお子さんの子育てに奮闘されている方、教育関係に従事されている方、医療関係の方などからお話を伺いながら検討を重ね、昨年十月にこども・子育て「青森モデル」を策定しました。
自然・地域と再生可能エネルギーとの共生制度においては、環境政策、税制、再生可能エネルギー、生態系の有識者や地元自治体の方々から、幅広い観点で御意見を頂き、制度案を策定しました。
このほか、教育改革有識者会議における御提言、ホタテガイ総合戦略チームにおける産学官が連携した検討。
大切なのは、頂いた御意見を踏まえ、今やるべき施策、将来的に取り組んでいくべき施策について明確なビジョンに落とし込み、具体的な取組を進めていくことです。
また、緊急的な課題に対しては、常に現場感覚で県民の皆様の元に足を運び、声を聞き、スピード感を持って対策を実行していくことが大切です。今冬の大雪被害、りんごの結実不足、ホタテの高水温被害などに対し、迅速に対応策を打ち出し、時として市町村の調整役となり、国等に対しても協力を求めていく。そうすることで信頼され、頼られる青森県になり、本当にここに住んで良かったと実感していただけるようにしていきたいと思います。
そして、私は県政における各種課題の解決に当たって、前例踏襲のやり方を見直し、青森大変革とも言うべき世界観を変えるような新しいアプローチを模索する努力も必要だと考えています。
世界の潮流を取り込み、質の高い雇用を生み出すような企業の集積。人口減少や医師不足、高齢化社会といった地域医療に係る課題を克服していくためのオンライン診療の推進。少子化社会における教育の多様性を確保し、こどもたちの希望を叶えるための教育DXの推進。地域の賑わいや交流を創出するスポーツ施設や情報発信機能も兼ね備えた研究施設の整備。青森県が変わり始めていると内外から評価されるような新機軸の政策に取り組んでいきます。
今、多くの若者が卒業を機に、より所得の高い仕事や新しい可能性を求めて県外へ流出していきます。仕事づくりが本県にとって最優先の課題であり、これについては様々な施策を講じていきますが、一方で、若い人たちにとって青森県には何もない、青森県では何もできないという刷込み、あるいは諦めから脱却していくことが重要だと考えています。青森県も世界の一部であり、青森県が変わっていくことで世界を変えることができると思っています。
「青森から始める挑戦」
届けていただいた声をしっかりと形にすること、そして、本当に困っている方々に寄り添い手を差し伸べることで信頼され、頼られる青森県に変わっていく。全国で、世界で評価されることで存在感を高め、青森県でも何かできる、青森県だからこそできることがあるという自信を深め、県民の皆様にとって誇れる青森県に変わっていく。
変わっていく青森県の未来に県民の皆様が希望を持てるよう、青森新時代の挑戦を始めます。
それでは、議案第一号「令和七年度青森県一般会計予算案」について御説明申し上げます。
令和七年度当初予算においては、県民対話集会「#あおばな」などにおける県民の皆様からの声に応えるとともに、「青森県基本計画『青森新時代』への架け橋」をはじめこれまで示してきた様々なビジョンの実現に向けて、県民目線で各種課題のブレイクスルーに挑戦することとしています。
GX(グリーン・トランスフォーメーション)青森の推進による新たな産業の創出、未来への投資としてのこども・子育て「青森モデル」や学校教育改革の推進、オンライン診療の普及・拡大、「地域モビリティ2・0」の推進、高齢者・障がい者が安心して暮らせる共生社会づくり、ボールパークやりんごイノベーションセンターの整備など、県民の皆様が全国に誇れるような新機軸の施策を展開していきます。
年間総合予算として編成した令和七年度一般会計当初予算の規模は、七千九十五億円、令和六年度当初予算対比七十三億円、一・〇パーセントの増となりました。
また、各種財源の確保や有効活用などにより、当初予算において財政調整用基金の取崩額をゼロとする収支均衡を継続するとともに、県債残高についても着実に縮減することといたしました。
以下、令和七年度の主要事業について、一体として編成した令和六年度二月補正予算に係る事業も含め、「青森県基本計画『青森新時代』への架け橋」における「しごと」、「健康」、「こども」、「環境」、「交流」、「地域社会」、「社会資本」の七つの政策テーマに沿って御説明いたします。
一つ目の政策テーマ「しごと」では、「しごとづくりと若者の定着」に挑戦します。
人口減少、少子高齢化社会、こどもを産み育てやすい環境づくり。県政の重要課題に対し、共通して必要となる政策は、若い世代が県内で十分な所得と働きがいを得られる魅力ある仕事づくりです。
目玉となる施策がGX青森の推進です。世界の潮流として、カーボンニュートラルと経済成長の両立を目指すグリーン・トランスフォーメーションは、新たな生産拠点の整備に向けた投資の進展、経済波及効果や良質な雇用の創出と人材定着などが見込める大きな可能性を持った分野であると考えています。
昨年の「青森県・立地地域等と原子力施設共生の将来像に関する共創会議」で決定された「地域の将来像の実現に向けた基本方針と取組」においても、新たな企業誘致の取組が位置付けられ、国、立地自治体、事業者等が一体となって取り組んでいくことが確認されました。
GX青森の推進については、各地域に存在するエネルギーの特性や優位性を生かしていくことが重要です。青森港、津軽港及び西海岸における洋上風力関連産業、八戸港における水素・アンモニア関連産業、上北地域や下北地域における原子力関連産業やむつ小川原地域におけるフュージョンエネルギー関連産業など、各地域の特性や優位性を生かした企業の誘致や産業の集積に戦略的に取り組んでいきます。
そして、今後成長が期待される半導体関連産業については、国内外からの戦略的な誘致に向けた調査検討と台湾企業等をターゲットとしたプロモーション活動を行うこととしています。
また、県内中小企業にとってもビジネスチャンスとして捉え、GX推進に向けたアドバイザーの派遣や研修会の実施、さらには新製品や新技術の開発に対して支援することとしています。
企業誘致の推進については、工業団地に係る産業立地促進費補助の雇用要件の緩和を図り、企業投資と分譲の促進を図るほか、若者にとって魅力ある仕事づくりと子育てしやすい雇用環境創出に向け、IT関連産業の誘致への支援について東北トップクラスの雇用奨励費を設定するなどニーズに応じた見直しを行うこととしました。
本県の経済と雇用を支える中小企業については、賃上げの流れや引き続く物価高騰の中、適切な価格転嫁に向けたアドバイザーの派遣と販売力・収益力の強化や経営コスト削減に向けた支援を行うこととしています。
このほか、県民の所得向上をテーマに、私と若手経営者や金融機関などの方々と今後の方策等について議論を重ねるラウンドテーブルを開催し、県全体での議論を深めるという新しい試みも実施していきます。
農林水産業においても、所得向上にこだわった政策を進めていきます。
農業者の所得向上を実現するために、ICTを活用した経営分析等の指導体制を強化するとともに、農業者の意欲的・計画的な取組についてソフト・ハードの両面からの成果連動型の支援を行います。
本県の農林水産業は生産面において強みを持っている一方で、ながいも、ごぼう、だいこん、にんにくなどの加工需要に十分対応しきれておらず、獲得できる付加価値が流出している状況にあります。関係団体の皆様の声も踏まえ、一次加工の強化に向けて、新たに最終製品製造者のニーズを研究し、フードバリューチェーンの構築に向けた実証に取り組んでいきます。
食品製造業等の付加価値向上については、更なる成長が期待できるアグリ関連産業におけるサプライチェーン構築に向けて、県内企業の参入ニーズを調査するとともに、農業法人等の生産性向上に向けた共同研究や最終製品のブランディングに取り組むこととしています。
また、本県農業の持続的な発展に向けて、新たな担い手の確保を図るため、企業の農業参入に向けたアプローチと受入態勢づくり、りんご産業への参入支援などを実施していきます。
ながいも生産については、面積当たりの収穫量と品質の向上に向け、産業技術センターに、ながいも種苗の冷蔵施設を整備し、種苗増殖をむかご方式から切いも方式へと大転換を図りたいと考えています。
畜産業においては、生産コストの上昇等が続く中、特に雌子牛の価格が全国平均を下回って推移していることから、ゲノミック評価の推進による市場価格の向上と優秀な雌子牛の繁殖への導入促進による生産構造の転換を進めていきます。また、津軽地域のもみ殻、稲わらなどを県南地域の畜産の敷料や飼料として利用するための仕組みづくりについても取り組んでいきます。
りんごについては、令和七年が本県におけるりんご植栽百五十周年となることから、市町村や関係団体と連携した記念式典の開催や全国への情報発信等を行い、更なる認知度向上に取り組んでいくこととしています。また、生産面では、引き続き結実確保のための受粉環境の改善や、モモシンクイガ被害の防止に向けた交信撹乱剤の使用に対する支援も実施します。
仮称「りんごイノベーションセンター」の整備については、現在基本設計を終え、来年度改築工事に着手することとしています。国内外の研究機関との共同研究等を行うためのオープンラボや、新品種開発、害虫管理技術開発など高度な研究機能を備えるだけではなく、特徴的な外観に象徴されるようなりんごに関する情報発信機能の強化を図ります。
林業については、外材中心のマーケット構造を転換し、県産材の利用促進を図るため、県産材利用推進事業者の登録制度を創設するとともに、製材事業者の生産性向上の取組に対して支援を行うこととしています。
水産業については、採苗不振や高水温によるへい死の危機を乗り越え、ホタテガイ養殖・加工業を三百億円産業へと成長させるため、昨年十月に策定した「陸奥湾ホタテガイ総合戦略」に基づき、効率的な採苗や高水温へ対応するための養殖技術開発や高性能のブイロボの整備、協業体制の構築をはじめとする経営力の強化、EUへのベビーボイルホタテの輸出などに取り組んでいきます。
また、若者の県内定着に向けては、今年度設立したあおもり人材育成・県内定着促進協議会において、県内就職を希望する学生が学年の進行とともに減少していることや、特に女性の転出者が多いことなどの課題を共有したところであり、新規学卒者の県内就職を促進するため、若者・女性のニーズに対応した仕事と生活の魅力の情報発信や企業側の採用力とPRの強化について、産学官の連携により取り組むこととしています。
二つ目の政策テーマ「健康」では、「医療環境の向上と共生社会の実現」に挑戦します。
県民の誰もがどこにいても同じ水準の医療が受けられる環境づくりに向け、鍵となるのがオンライン診療をはじめとした医療機関のICTの推進だと考えています。本県におけるオンライン診療の実施は全医療機関・診療所の六・五パーセントにとどまっており、県内医療機関から導入に係る初期投資がネックとなっているという声もお聞きしました。
そこで、各医療機関においてオンライン診療に必要となる機器等の整備について、国庫補助金の活用に加えて、本県独自の支援を追加し、集中的に導入を促進することとしています。また、弘前大学附属病院等が地方病院と連携して実施するICUや周産期医療等の遠隔診療についても後押しすることとしています。さらに、へき地医療の分野においても、拠点病院がオンライン診療により診療所を支援する実証モデルの構築や市町村におけるICT活用の取組を促進するほか、救急医療の分野において、救急搬送受入病院が他の病院や消防と患者のデータ等を共有するためのモバイルICTの導入を進めます。
こうした取組により、医療機関から遠い地域に住む方や高齢者の通院の負担などを少しでも軽減したいと考えています。
医師確保については、人口十万人当たりの医師数は増加しているものの、全国と比較していまだに医師少数県となっており、地域的な偏りも見られます。
来年度、弘前大学におけるキャリア形成プログラムが適用される学生が卒業を迎えるに当たり、医師本人の希望と地域のニーズに応えられるよう、弘前大学に地域医療支援センター分室を設置し、効果的なプログラムを策定していきます。また、今年度から医師修学資金の貸与枠を大幅に拡充したところですが、来年度はさらに東北医科薬科大学との連携による県内定着に向けた新たな支援枠を創設することとしています。
看護師確保については、養成所卒業者の県内就職率が全国と比較して低いという現状に対し、今年度から看護師等修学資金の貸与枠を大幅に拡大したところです。来年度は、県立保健大学に県内就職コーディネーターを配置し、医療機関等と連携して県内就職の促進を図るほか、看護師を含めた医療福祉分野における学生の県内定着を促進するための検討会を開催し、効果的な情報発信の横展開を図ることとしています。
このほか、薬剤師については人口十万人当たりの病院薬剤師数が全国最下位という現状を踏まえ、地域医療の維持・確保に必要な県内病院における薬剤師の確保・定着を図るため、奨学金の返還支援制度を創設するほか、中高生を対象とした体験授業や県内出身者のUIJターン促進のための進路相談会などを実施することとしています。
平均寿命の延伸に向けては、とりわけ本県の死亡率の一番の要因であるがんと二番目の要因である心疾患の改善が課題です。
がんについては生活習慣の改善である一次予防に加え、二次予防であるがん検診による早期発見・早期治療が重要です。特に就労者が多い四十代から五十代の死亡率が高い一方で、小規模事業者等においては十分にがん検診が実施できていないことから、職場における健康診断とセットで市町村の大腸がん検診を受診できるようにするための新たな体制づくりに取り組みます。
また、今年度に引き続き、がん検診初回精密検査の費用への支援について、市町村と連携して実施していきます。
このほか、市町村からの御要望等を踏まえ、がん患者の方のQOL向上のため、罹患前と同様に日常生活を送るための医療用ウィッグや補整下着などの購入費用を助成する市町村の取組を新たに支援します。
心疾患や脳血管疾患は本県における死因の二割以上を占めていますが、その発症につながる前段階である高血圧症等について、治療を必要としながら治療を開始していない方の割合が約四割と非常に高くなっています。そこで、高血圧症未治療者への受診動機付けキャンペーンの実施や医療関係者への治療基準等の周知を行い、患者・医療従事者への適切な受療・治療につなげていきます。
高齢者が生きがいを持ち、安心して暮らせる環境づくりに向けては、介護の現場における人材確保が喫緊の課題とされる中、ロボットやICT等のテクノロジーを活用し、事業所における業務の効率化、職員の負担軽減を支援していきます。また、持ち上げない、抱え上げない、引きずらないノーリフティングケアの推進に向けた意識啓発や研修等を行うことで、介護職員と利用者双方の安全・安心を目指していきます。
高齢者の健康づくりや生きがいの創出に向けたつどいの場づくりについては、アクセスなどの課題に対応した老人クラブ等の送迎モデルの創出に引き続き取り組むほか、ゲーム機を使用したシニアスポーツ大会の更なる充実、保健師など専門職の活用促進に取り組んでいきます。
また、障がい者等が安心して暮らせる社会づくりに向けた第一歩として、今年度、配慮が必要な方の駐車スペースの適正利用を図る「青森県思いやり駐車場制度」を創設したところであり、来年度は障がいのある方もない方も共に暮らしやすい共生社会づくりを目指した条例制定に向けて取り組んでいきます。
このほか、身体障がい者福祉センターねむのき会館についても改築工事を進めていきます。
三つ目の政策テーマ「こども」では、「青森モデルの実現と教育改革」に挑戦します。
昨年十月に策定したこども・子育て「青森モデル」は、公募等により選ばれた青森県こども未来県民会議のメンバーとの直接の対話で得られた生の声やアンケート調査等に基づく子育て世帯等の御意見を集約し、一人ひとりの希望や不安の声に応える政策を具体化していくプロセスとしてまとめたものです。
「青森モデル」においては、青森県で結婚し、こどもを産み育てることに希望を持っていただくことで合計特殊出生率の向上を図るという目標を掲げるとともに、若い世代の人口移動による増加に取り組み、十五歳から四十九歳の人口の純移動率の向上を図ることを目標としています。
この二つの目標に対し、「若者や女性の定着・還流」、「家庭と仕事の両立」、「出会い・結婚」、「妊娠・出産」、「子育て環境」の五つの政策を柱として取組を進めていくこととしています。
「若者や女性の定着・還流」については、政策テーマ「しごと」で申し上げた若者・女性の県内定着に向けた取組のほか、政策テーマ「地域社会」における移住やUIJターンなど還流に向けた取組を進めていきます。
「家庭と仕事の両立」については、子育てに取り組みやすい職場環境の整備など企業を含めた社会全体での取組が重要です。働きやすく魅力ある職場づくりに向け、県内企業の経営者の意識改革や休業しやすい体制構築に向けたアドバイザー派遣などを行うとともに、特別保証融資制度においても、くるみん認定企業やあおもり若者定着サポート企業が行う前向きな取組について、保証料補助を拡充し、支援することとしています。
また、県民の皆様からの声も踏まえ、夏・冬休み期間におけるこども食堂等への県産食材の提供を通じた子育て世帯への支援と学校給食において他地域の地元食材を一品プラスする取組を通じた食育推進を実施することとしています。
「出会い・結婚」については、市町村と連携して実施しているマッチングシステムの会員数増加に向けたプロモーション強化のほか、結婚新生活に関する経済的な支援を実施することとしています。
「妊娠・出産」については、今年度、生殖補助医療による不妊治療の自己負担分について全額支援する制度を創設したところですが、医療機関や治療者の方から頂いた御意見を基に、来年度は一般不妊治療まで支援を拡大し、経済的負担を軽減したいと考えています。なお、都道府県単位での両治療に対する全額支援は全国初の取組となります。
このほか、妊産婦が遠方の医療機関で健診や分娩を行う際の交通費、宿泊費への支援も行うこととしています。
「子育て環境」については、今年度十月から開始した学校給食費等無償化に係る市町村交付金について、来年度は通年分として支援するとともに、市町村がより無償化政策を進めやすいよう給食費以外の無償化についても交付率を十分の十とするなど制度の弾力化を行うこととしました。また、食材価格の高騰等を踏まえ、臨時的に単価を引き上げる対応を図っています。
保育士・保育所支援の充実については、保育士の給与引上げや保育補助者の配置等の処遇改善、保育従事者の就職相談や再就職のコーディネート、相談窓口の設置、保育園の遊具等の整備への支援などを実施することとしております。
急なこどもの預入れや社会参加、リフレッシュ機会の増加を図るため、ベビーシッター制度の普及拡大について多くの御意見を頂いたところであり、新たにキッズシッター・病児シッターの利用者への支援を実施することとしています。
また、急な病気への対応として、現在、救急外来や電話によるこども医療相談などが実施されているところですが、自宅でも受診できるよう夜間・休日における小児科オンライン診療の体制整備を図っていきます。
このほか、子育て環境の充実を図るため、県立の全ての文化施設について高校生以下の入館料等を無償化することとし、今年度途中から実施している美術館に加え、令和七年度から三沢航空科学館、白神山地ビジターセンター、浅虫水族館、三内丸山遺跡センターで実施することとしました。なお、各種施設のこどもの料金無償化に当たり、関連する条例改正案をそれぞれ提案いたしております。
「子育て環境」については、ソフト面での取組に加え、ハード面でも子育てに配慮した歩道や道路・河川の休憩施設におけるおむつ交換台の設置など環境整備を図っていきます。
「青森モデル」の実現に向けては、これらの政策に係る県の取組だけではなく、市町村、企業・団体がそれぞれ主体的な立場で、かつ相互に連携しながら、さらには国からも必要な支援を得つつ、社会全体で取り組んでいきます。
様々な環境にあるこどもについては、こどもの居場所の設置や機能拡充を促進するため、新たに備品購入等に対する支援を行います。また、医療的ケア児については、小児在宅支援センターにおける相談支援等を実施するとともに、受入可能な事業所の増加に向けた取組や特別支援学校における通学支援の試行的実施などの取組を進めていきます。
学校教育改革の推進については、青森県教育改革有識者会議において活発な御議論をいただき、昨年十月には、「学校の働き方改革、教職員のウェル・ビーイング向上」、「教育DX、学びの環境アップデート」、「学校の経営力強化」のための追加の取組方策と、更なる教育改革を推進するための基盤強化として、「教育DXのための環境整備」や「内発的な校内改革に向けた伴走支援」などについて御提言を頂いたところです。
これらの御提言を踏まえ、まず、「学校の働き方改革」については、教員が児童生徒への指導等に注力できるよう、授業の準備等の補助を行うスクールサポートスタッフの配置について充実強化を図り、全ての県立高校へ配置するほか、公立小中学校については配置時間を拡充するとともに、複数の学校での兼務体制を見直し、一校一人の配置体制を整備することとしています。
このほか、いじめ・不登校などの問題行動や児童生徒の心理面での問題などについて教育相談を実施する外部人材などについても配置の拡充を図ることとしています。
また、市町村立小中学校における働き方改革を進めるための環境整備への支援にも引き続き取り組んでいくほか、生徒・保護者の利便性向上と教職員の事務負担の軽減を図るため、県立学校の入試に係るウェブでの出願システムを導入していきます。
そして、教員の確保に向けては、これらの働き方改革の取組に加え、教員の仕事の魅力発信、リクルート活動やUIJターンによる他県からの採用の強化、退職者や経験のない教員免許状保有者といった人材活用の取組を進めていきます。
「学びの環境アップデート」については、県立高校や特別支援学校において地域の関係機関と連携しながら本県の課題や可能性を主体的に探究する取組や、公立小中学校において、不登校児童生徒が自身のペースで学習・生活するための校内教育支援センターの設置を促進するほか、教員に対する研修を実施することとしています。
「学校の経営力強化」については、県立学校における学校運営協議会の導入や地域と学校の協働活動の活性化を一体的に推進していきます。
「教育DXのための環境整備」については、新たな取組として生徒の多様なニーズに応じた学びを提供するため、総合学校教育センターに遠隔教育配信スタジオを設置し、県立高校で遠隔授業等を実施するための環境整備を行い、小規模校においても大学進学に向けた高度な授業などを実施できるよう取り組んでいきます。
また、県立学校において、校務システムやデジタル教材のクラウド化を進めるとともに、児童生徒・保護者・学校が一体となった教育活動を展開するため、教育データを集約・可視化した教育ダッシュボードの基盤を整備することとしています。児童生徒や保護者にとって学習の進捗や理解度などが把握しやすくなることで、学習意欲の向上や学校生活の充実、家庭における関心の向上などが期待されます。
公立小中学校においては、ICT教育推進のための一人一台情報端末等について計画的な更新に向けた支援を行います。
「内発的な校内改革に向けた伴走支援」については、自発的、主体的な教育改革を推進するため、学校経営力の強化に向けた外部コンサルタントの活用による伴走支援を行います。
四つ目の政策テーマ「環境」では、「脱炭素社会の実現と自然との共生」に挑戦します。
国のエネルギー基本計画に基づき、電力の構造転換を図るため再生可能エネルギーの普及拡大が進められており、風力発電など再生可能エネルギーの立地拠点となっている本県においても更なる開発が進められる中、共有財産である健全で恵み豊かな自然環境、景観、歴史・文化等を守り、これを良好な状態で次世代へ引き継いでいかなければなりません。
そこで、昨年度公表した「自然環境と再生可能エネルギーとの共生構想」に基づき、今年度、立地地域と再生可能エネルギーが持続可能な形で向き合い、共存共栄していくためのルールづくりについて、有識者会議をスタートさせ、活発な議論を行ってきました。そして、ゾーニングと合意形成手続により引き継ぐべき環境を保全し、持続可能な形で再生可能エネルギーの円滑な導入を図ることとし、議案第十九号「青森県自然・地域と再生可能エネルギーとの共生に関する条例案」とその政策効果・実効性を補完するための議案第十八号「青森県再生可能エネルギー共生税条例案」を提案しているところです。
こうしたルールづくりと併せて、共生制度の円滑な運用に向け、県民や事業者への制度周知・普及啓発を図るとともに、市町村における共生区域の設定・事業認定等を行うための協議会の運営等について支援を行っていきます。
カーボンニュートラルの達成に向けては、本県では「青森県地球温暖化対策推進計画」に基づき、二〇三〇年の中間目標に掲げる温室効果ガス排出量の削減に取り組んでいるところですが、地球温暖化防止の取組と併せて、県民や事業者のエネルギー費用の負担軽減につなげるなど、環境と経済の好循環を創出し、地域が持続的に発展していくための地域脱炭素に向けた取組が求められています。
こうしたことから、市町村における地域脱炭素の取組を促進するためのトップセミナーの開催や専門家等のチームによる実行計画の策定等に係る伴走支援を実施します。また、中小企業が脱炭素経営に向けて一体となって取り組むための新たなコンソーシアムを設立し、脱炭素スクールを開催するなどの支援を行います。
豊かな自然環境と多様な生態系の維持に向けて、野生鳥獣の対策は喫緊の課題です。
一昨年、出没・人身被害件数が過去最多を更新したツキノワグマについては、令和六年においても高水準で推移しており、今年度から特定鳥獣保護管理計画の策定に着手したところです。来年度は生息動態調査を行い、専門家からの意見も伺いながら計画を策定するとともに、ニホンジカ・イノシシといった大型獣に関してもデジタル技術を活用した新たな捕獲技術の実証・普及に取り組みます。
また、ハンターの減少及び高齢化が進んでいることから、狩猟免許新規取得者の確保に向けた魅力発信や育成のための研修会、さらには資格取得や猟銃購入費等への支援を新たに実施するなど、県内各地で将来にわたって持続的な捕獲が可能となる体制の構築を目指していきます。
五つ目の政策テーマ「交流」では、「国内外とつながる交流・物流の拡大」に挑戦します。
少子化に伴う人口減少やモータリゼーションの進展により、地域公共交通の利用者数は年々減少し、さらには運転手等の人材不足も相まって鉄道や路線バスなどの地域公共交通は厳しい状況にあります。日常生活の足として、また観光やビジネスなどの移動手段として、持続可能なサービスを維持するためには新しいアプローチで課題解決を図る必要があります。
こうした課題解決の取組を「地域モビリティ2・0」として位置付け、県内地域交通全体に「簡単に探せる・移動手段を選べる・迷わず乗れる」といった大変革を目指していきます。
具体的な取組としては、約六割が経路検索に対応していない県内のバス路線について、データ整備を行い、いつでもどこでもスマートフォンがあれば県内の行きたい場所までの公共交通ルートを検索できるといったシステムを整備し、利便性向上による利用促進を図ることとしています。
市町村における域内交通については、今後のあり方を示す計画策定の支援を行うとともに、路線再編や運賃・ダイヤの見直し、さらには弘南鉄道大鰐線休止後の代替交通について関係者と連携しながら検討を進めていきます。また、交通が不便な地域・時間帯における移動手段確保のため、引き続きアオモリモビリティシェアの実証のほか、複数の交通モードや他分野との連携によるMaaS実装に向けた取組も進めていきます。
バス、タクシー、鉄道などの運転手不足の課題解決に向けては、交通事業者が行う採用活動と労働環境改善のための取組について支援を行うほか、人材確保に向けた事業者間の連携を促進していきます。
特に厳しい状況にあるローカル鉄道については、利用促進や相互連携に向けた会議を発足させるとともに、遠足や校外学習などの教育旅行に係る運賃を無償とする取組への支援や多言語に対応した情報サイトの開設などに取り組みます。また、民営鉄道について専門コンサルタントによる調査を行い、広域交通の維持に向けて沿線地域との検討を進めていきます。
観光分野の新しい取組としてはAI観光案内の構築が挙げられます。多様化するニーズに応え、本県が観光地として選ばれるため、多言語に対応し、二十四時間三百六十五日、生成AIにより一人ひとりのニーズに応じた観光ルートを提案するなど高い水準のシステムの構築を目指します。
また、本県の課題である冬季観光については、観光事業者の年間を通じた経営と雇用の安定化のため、更に底上げを図る必要があります。観光事業者が主体となって実施する宿泊キャンペーンについて利用促進を図るほか、宿泊の利用から周辺の飲食店や土産物店等への周遊につなげる割引や特典のキャンペーンを地域と一体となって実施します。
このほか、来年度、北海道新幹線開業十周年を契機としてJR東日本等と連携し、青函周遊観光の認知度向上・定着化に取り組んでいきます。
昨年一月から十一月までの十一か月間だけでも外国人延べ宿泊者数は初めて年間四十万人を超え、まさに青森インバウンド新時代の幕開けと言えます。本県経済の更なる活性化が期待されるところであり、宿泊者数と観光消費額の増加を図るため、提供するコンテンツの内容や発信の手法について各国の特徴を踏まえた戦略的な誘客対策を講じていきます。
国際線の路線維持・拡大に向けては、青森空港における運航体制をしっかりと維持するとともに、昨年十月に運航が再開し、今後飛躍が期待できる青森・台北線について、幅広い年代にアプローチした利用促進を図ります。また、昨年一月に運航が再開した青森・ソウル線については、来年度の就航三十周年を契機とした利用促進キャンペーンを実施するとともに、若い女性層をターゲットにSNSを活用した情報発信などを強化していきます。
輸出の分野については、本県農林水産品の輸出の九割以上がアジア向けであり、県産品の更なる輸出拡大を図るためには新規市場の開拓が必要です。このため、EU向けの新たな輸出のパートナーをリサーチするほか、アメリカ、香港、シンガポールといった地域ごとのマーケットに応じたプロモーションや東南アジアへの輸出に向けた事業者のハラール等の国際認証の取得促進などを行っていきます。
また、国内取引を中心に実績を伸ばしている「エー・プレミアム」については、本年四月から西日本へ集荷翌日に配達できる仕組みを整え、販路拡大と需要の定着を図るとともに、青森空港での通関の強みを生かし、香港、台湾、シンガポール、タイなどでの販路開拓に取り組んでいきます。
六つ目の政策テーマ「地域社会」では、「県民総参加の地域づくり」に挑戦します。
いよいよ来年一月から、青の煌めきあおもり国スポ冬季大会が始まり、八戸市、三沢市、大鰐町、秋田県鹿角市で、スケート、アイスホッケー、スキーの各競技が行われます。
また、令和八年十月の国スポ本大会及び障スポの開催に向けては、県民総参加に向けた更なる気運の醸成を図るとともに、リハーサル大会の実施や仮設等の対応を含めた各会場の準備など万全の体制を整えていきます。総合開・閉会式を屋内で実施するなど簡素化・効率化等により、参加選手の負担等の軽減を図りつつ、創意工夫により青森県ならではの大会を目指していきます。
そして、今年度の佐賀国スポでは男女の総合成績が二十三位と順位を上げてきたところであり、競技力向上の取組を充実・加速させ、本県開催において天皇杯・皇后杯の獲得を目指すとともに、一過性のイベントとしてではなく、学校、クラブ、企業等の県民のスポーツ活動の底上げを図り、大会後も本県スポーツの活性化につながるよう取り組んでいきます。
障スポについては、障がい者の方に競技だけではなく気運醸成に向けた活動など様々な形で参加いただき、関わって良かったと思ってもらえるような大会にしたいと考えており、政策テーマ「健康」で申し上げた取組を含め、障がい者の方が活躍できる社会づくりを進めていきます。
このほか、令和八年からJリーグの開幕時期の変更に伴い、各クラブのトレーニングキャンプが六月、七月といった夏季に変更されるという機会を捉え、本県の冷涼な気候を生かし、Jリーグクラブキャンプの誘致に新たに取り組み、プロスポーツに親しむ機会の創出と地域の活性化を目指していきます。
文化面の取組については、新たに民俗芸能活性化大会を開催し、記録映像を保存・発信することで、文化の継承に向けた若い世代等への関心の喚起を図っていきます。
本県の人口の転出超過は依然として厳しい状況にありますが、若い世代が将来にわたり安心して青森で暮らしていけるような魅力ある多様な仕事づくりに加え、移住やUIJターンなどの還流に向けた取組が重要です。
首都圏における就職相談窓口を利便性に優れた有楽町に集約するとともに、市町村や首都圏大学との連携強化などに取り組みます。また、若者や女性をターゲットとして本県の暮らしや仕事などについて情報発信するほか、首都圏における本県ゆかりの店舗を交流や情報発信の拠点となる移住サポート店として活用するなど、関係人口の増加を図る取組も始めることとしています。
UIJターン就職については、支援金の利用の増加傾向を踏まえて対応するほか、県内企業と連携した奨学金の返還支援についても引き続き実施していきます。
地域の強みを生かした地域づくりに向けては、本年四月から県民局の廃止に伴い設置する各地域連携事務所において、各地域と連携・協働し、地域の課題解決や新しい価値の創出に取り組んでいきます。
このほか、新しい地域づくりの形として、野球場を核に年間を通じた賑わいや交流を創出するボールパークの整備に向けて基本計画を策定するとともに、整備・運営手法等を比較検討する民間活力可能性調査を実施します。
安心で快適な生活基盤づくりについては、県・市町村・関係機関等が保有するデータを連携し、防災やこども・子育てなどの分野でサービスや政策に活用するための基盤の整備を進めていきます。
また、青森県行財政改革大綱に基づく県庁DXを進めるため、端末のモバイル化などテレワーク環境の整備や生成AIをはじめとした業務改善のためのデジタルツールの導入、ペーパーレス促進のためのソフトウェアの導入などを進めます。
県民の食の安全安心や動物愛護の推進を将来にわたって維持していくため、県獣医師職員が果たす役割は重要であり、安定的に人材を確保するため、修学資金の貸付枠を拡大するほか、処遇改善、情報発信の強化、職場環境の充実を図っていきます。なお、関連する条例案として、提案しております議案第二十五号「職員の給与に関する条例等の一部を改正する条例案」において、県獣医師職員の初任給調整手当の改定を盛り込んでいるところです。
七つ目の政策テーマ「社会資本」では、「産業・災害に強く、しなやかな県土の実現」に挑戦します。
交流・物流の拡大に向けて、本県の経済と生活を支えるインフラ整備を着実に進めていく必要があり、昨年二月に、未来の地域の姿を県民の皆様と共有するため、県内百五十を超える道路及び河川事業等の今後十年間の完成見通しを公表したところです。
下北半島縦貫道路について、来年度むつ南バイパスと横浜南バイパスが全線供用開始するのをはじめ、津軽自動車道、青橅山バイパス、八戸環状線などについても進捗を図っていきます。
また、昨年洋上風力の基地港湾に指定された青森港については、令和十年度からの基地港湾利用を想定し、国と県が連携して国際物流ターミナルの整備を進めるとともに、津軽港についても、O&M(オペレーション・アンド・メンテナンス)港としての整備に取り組みます。
昨年の能登半島地震から一年が経ちましたが、本県は県土全体が三方を海に囲まれた半島のような地形であり、大規模災害時には同様の問題が生じることが懸念されることから、道路等における危険箇所等の防災対策を進めるほか、河川整備等の流域治水に集中的に取り組みます。加えて、国の公共事業の対象とならない道路、河川、港湾についても緊急的な安全対策を集中的に実施していきます。
下北地域広域避難路の整備のほか、下北半島を横断する泊陸奥横浜停車場線の通年通行化や今別蟹田線の小国峠区間の平坦化について、取組を進めていきます。
さらに、除排雪DXについても取組を進めることとしており、専用サイトによる除排雪予定箇所のお知らせを全県に拡大するほか、除排雪管理システムの全県導入や雪山除雪ガイダンスの路線拡大による除雪作業の効率化を図ることとしています。
防災・減災の推進については、能登半島地震で顕在化した課題等を踏まえ、これまでより一段上の自助・共助・公助の強化を図るため、今後五年間で重点的に実施すべき事項について「Aomori防災・減災強化Action Program」としてとりまとめたところです。
このプログラムに基づき、避難所における生活環境の充実を図るため、災害備蓄品を見直し、段ボールベッドやパーティション、さらにはミルクなどの子育て関連用品や大人用おむつなど高齢者等に配慮した品目について新たに備蓄することとしたほか、自動ラッピングトイレやトイレカーなど避難所における環境改善のための資機材等についても導入することとしました。これにより、発災時の良好な避難環境を確保していきます。
また、市町村の災害対応力の向上と地域防災力の強化を図るため、受援計画や個別避難計画の策定等に向けた支援を行うほか、防災教育センターにおいてデジタルツールを活用した教育機能の強化を図ることとしています。
さらに、大規模災害時における県、市町村の公助に限界があることも踏まえ、県民の皆様が防災を「じぶんごと」として捉え、主体的に取り組んでいけるよう、各主体の役割を明確にする防災基本条例の制定についても取り組んでいきます。
これら七つの政策テーマに基づく取組のほか、引き続くエネルギー価格や物価高騰に対し、国の交付金も活用しながら各分野に対する支援策を講じていきます。
農林水産業分野においては、配合飼料の価格高騰により経営が悪化している畜産経営体への支援のほか、子牛生産費の上昇と販売価格の低迷に直面する繁殖農家への支援、燃油や飼料価格高騰の影響を受ける漁業・養殖業者やナマコ種苗生産、サケふ化場、地域排水など公益的な役割も担う農業水利施設の電気料金高騰に対する支援などを実施することとしています。
また、地域公共交通や安定的な物流の確保等に向けたトラック・タクシー・航路に対する支援を実施するほか、中小企業者へのLPガス等に対する支援、料金への転嫁が困難な医療・福祉施設、保育・児童入所施設等に対する支援、私立高校における就学支援の拡充などを行うこととしています。
以上が主要事業の内容であり、県民の皆様に対し、これらの施策がより分かりやすく伝わるような情報発信に努めるとともに、市町村をはじめ、あらゆる主体との連携・協働を強化しながら、青森新時代の挑戦の取組を進めていきます。
次に、歳入予算の主なるものについて御説明申し上げます。
県税については、本県経済の動向、地方税制改正の内容等を踏まえ、千五百五十九億六千百六十万円余を計上いたしております。
地方消費税清算金については、地方消費税の都道府県間における清算金七百十四億八千万円余を計上いたしております。
地方交付税については、原資総額の伸び率及び国の算定方針を基礎に、普通交付税の交付見込額を推計したうえで、当初予算において二千八十六億七千三百万円を計上したほか、特別交付税については、三十四億円を計上いたしております。
県債については、地方債計画、その運用方針等を勘案して積算のうえ、五百二十七億六千百万円を計上いたしております。
このほか、国庫支出金等については、主として歳出との関連において計上いたしております。
以上が「令和七年度青森県一般会計予算案」の概要であります。
このほか、上程されました議案の主なるものについて御説明申し上げます。
議案第二号から議案第十七号までは、特別会計及び企業会計に係る予算案であります。
議案第二十一号「青森県地域県民局及び行政機関設置条例の一部を改正する条例案」は、地域県民局を廃止し、地域連携事務所、県税事務所、環境管理事務所、農林水産事務所及び県土整備事務所を設置するとともに、保健所、福祉事務所、児童相談所及び家畜保健衛生所の名称を改める等の改正を行うものであります。
議案第二十二号「青森県附属機関に関する条例の一部を改正する条例案」は、青森県環境審議会に青森県自然・地域と再生可能エネルギーとの共生に関する条例に基づく事項を調査審議するための部会を設ける等の改正を行うものであります。
議案第二十三号「職員の勤務時間、休暇等に関する条例の一部を改正する条例案」は、育児を行う職員の早出遅出勤務及び時間外勤務の制限について対象となる職員の範囲を拡大するものであります。
議案第二十五号「職員の給与に関する条例等の一部を改正する条例案」は、令和六年十月八日付けの人事委員会からの「職員の給与等に関する報告及び勧告」に基づき、職員の給料月額及び先程申し上げた獣医師職員の処遇改善に係る初任給調整手当の改定等を行うものであります。
議案第三十五号「青森県動物愛護センター使用料及び手数料徴収条例の一部を改正する条例案」は、犬又は猫の譲渡の推進を図るため、譲受けに係る手数料を徴収しないこととするものであります。
議案第四十六号「青森県県営住宅条例の一部を改正する条例案」は、子育て世帯が安心して暮らせる住宅の確保及び結婚に伴う住宅確保の支援の一環として、子育て世帯及び若年夫婦世帯の入居収入基準を改めるものであります。
議案第五十八号「青森県人事委員会委員の選任の件」は、青森県人事委員会委員奥崎栄一氏の任期が来る三月三十一日をもって満了いたしますので、後任の委員として同氏を再任いたしたく、御同意を得るためのものであります。
議案第五十九号「青森県監査委員の選任の件」は、青森県監査委員竹内均氏の任期が来る三月三十一日をもって満了いたしますので、後任の委員として佐々木知彦氏を選任いたしたく、御同意を得るためのものであります。
議案第六十二号「令和六年度青森県一般会計補正予算案」は、先に成立した国の令和六年度補正予算に対応するため、所要の予算措置を講ずるものであります。
次に、専決処分した事項の報告及び承認を求めるの件について御説明申し上げます。
報告第一号「令和六年度青森県一般会計補正予算」は、市町村が実施する生活困窮者向け灯油購入費助成事業に対する支援及び一般家庭等におけるLPガス料金減額に要する経費について、それぞれ所要の予算補正の必要が生じたものです。
報告第二号「令和六年度青森県一般会計補正予算」は、十二月以降の集中的な降雪に伴い、県管理道路の除排雪に要する経費について、予算補正の必要が生じたものであります。
報告第三号「令和六年度青森県一般会計補正予算」は、りんご樹の枝折れ等の被害拡大を防止するため、りんご園地における無人ヘリコプターを使用した融雪促進剤の空中散布を支援するのに要する経費について、予算補正の必要が生じたものであります。
これらはいずれも早急に措置する必要がありましたが、議会を招集する時間的余裕がないことが明らかであると認め、本職において専決処分をいたしたものであります。
それ以外の議案につきましては、各議案の末尾に記載されている提案理由等のとおりであります。
以上、県政運営に関する基本的な方針を申し述べるとともに、提出議案の概要について御説明申し上げましたが、議事の進行に伴い、御質問に応じ、本職をはじめ関係者から詳細に御説明申し上げたいと思います。
なにとぞ、慎重御審議のうえ、原案どおり御議決、御同意並びに御承認を賜りますようお願い申し上げます。
なお、この機会に議長のお許しを得て、第十四回核燃料サイクル協議会の結果について御報告申し上げます。
核燃料サイクル協議会につきましては、これまでも核燃料サイクル政策に係る重要な節目において、本県の要請を受け、国が開催してきたところであります。
今回は、昨年八月の六ケ所再処理工場の二十七回目のしゅん工目標の見直し、十一月のむつ市の使用済燃料中間貯蔵施設の操業開始などを踏まえ、改めて現内閣における原子力・核燃料サイクルの位置付けや中間貯蔵後の使用済燃料の搬出先、高レベル放射性廃棄物の搬出期限遵守、「青森県・立地地域等と原子力施設共生の将来像に関する共創会議」で取りまとめられた将来像の実現に向けた政府一体の取組などについて、確認・要請する必要があると考え、核燃料サイクル協議会の開催を要請いたしました。
昨年十二月二十四日に開催された同協議会では、林内閣官房長官、浅尾原子力防災担当大臣、城内科学技術政策担当大臣、あべ文部科学大臣、武藤経済産業大臣、林電気事業連合会会長に御出席いただきました。
同協議会において、私から、
一 原子力・核燃料サイクル政策の推進について
一 六ケ所再処理工場のしゅん工・操業に向けた取組について
一 リサイクル燃料備蓄センターの中長期の貯蔵計画等について
一 プルトニウム利用について
一 特定放射性廃棄物の最終処分と搬出期限の遵守について
一 共創会議を受けた取組方針について
の六項目について、九件の確認及び七件の要請をいたしました。
一点目の「原子力・核燃料サイクル政策の推進について」は、私から、
・原子力・核燃料サイクル政策の推進
・安全性の確保
・防災対策
・原子力人材育成・研究開発
について確認・要請し、武藤経済産業大臣からは、
・引き続き、原子力・核燃料サイクルの推進を国の基本的方針として堅持していく
・原子力施設の安全性確保に向け、事業者に対し、原子力規制委員会の審査への的確な対応や事業者間連携での技術力向上、自ら安全を追求するマネジメント体制の整備などを指導していく
・原子力利用の基盤である技術やサプライチェーンの維持・強化、人材育成への支援も着実に進めていく
・高速炉は核燃料サイクルの効果をより高めるものとして重要であり、GX経済移行債を活用し、実証炉開発を進めていく
旨の発言がありました。
浅尾原子力防災担当大臣からは、
・リサイクル燃料備蓄センターの将来的なオフサイトセンターについて、青森県と連携し準備を進めている
・引き続き、避難道路や放射線防護対策施設、災害備蓄の充実など原子力災害に関する対策について支援していく
旨の発言がありました。
あべ文部科学大臣からは、
・核燃料サイクルの確立や原子力施設の安全性の向上に向け、原子力分野の人材育成や研究開発の推進は重要であり、高速実験炉「常陽」を活用した研究開発、日本原子力研究開発機構東海再処理施設等の建設・運転を通じて培った基盤技術の日本原燃六ケ所再処理工場への技術移転や技術者の派遣等の支援、さらに、量子科学技術研究開発機構六ケ所フュージョンエネルギー研究所における研究開発、その成果を基に社会実装を担うベンチャー企業二社が昨年青森県内に創業している
旨の発言がありました。
林電気事業連合会会長からは、
・原子燃料サイクルの推進は原子力発電所の安定運転と不可分であり、電力の安定供給に寄与するものと考えており、引き続き使用済燃料の再処理、プルトニウムの利用などしっかりと対応していく
・原子力発電の最大限の活用のために業界で連携しつつ、自主的な安全性向上に取り組んでいく
旨の発言がありました。
二点目の「六ケ所再処理工場のしゅん工・操業に向けた取組について」は、武藤経済産業大臣から、
・今年八月に六ケ所再処理工場が二十七回目のしゅん工目標見直しとなったことは重く受け止めている
・核燃料サイクルの確立に向け、六ケ所再処理工場のしゅん工は、必ず成し遂げるべき課題であり、日本原燃に加え産業界全体にも原子力規制委員会の審査対応における進捗管理の徹底や必要な人材確保を強く指導し、総力を挙げて取り組んでいく
旨の発言がありました。
林電気事業連合会会長からは、
・再処理工場の早期しゅん工に向け、引き続き電力各社から専門知識を有する人材の派遣などを行っていく
・本年十月から電気事業連合会の役員が日本原燃の経営会議に参加し、審査や工事の進捗確認、必要に応じて指導や助言などを行って対策を強化している
・今後もオールジャパン体制で支援していく
旨の発言がありました。
三点目の「リサイクル燃料備蓄センターの中長期の貯蔵計画等について」は、武藤経済産業大臣から、
・むつ中間貯蔵施設について、事業者に対し中長期的な貯蔵計画を早期に青森県に示すよう指導する
・中間貯蔵された使用済燃料について、六ケ所再処理工場へ搬出する方針を先日審議会で提示した次期エネルギー基本計画の原案に盛り込んだ
・事業者に対し、地元との約束である使用済燃料の搬出期限の遵守を強く指導していく
旨の発言がありました。
四点目の「プルトニウム利用について」は、武藤経済産業大臣から、
・プルサーマルについては、電気事業連合会が示している計画も踏まえ、国も事業者と連携し、一層の推進を図っていく
旨の発言がありました。
城内科学技術政策担当大臣からは、
・我が国は「利用目的のないプルトニウムは持たない」との原則を堅持しつつ、核燃料サイクルを推進することとしている
・今後とも、プルトニウムの適切な管理と利用が行われるとともに、サイクルの環の確立がなされるよう引き続き着実に取り組んでいく
旨の発言がありました。
林電気事業連合会会長からは、
・プルサーマルを早期かつ最大限導入することを基本とし、稼働する全ての原子炉を対象に二〇三〇年度までに少なくとも十二基のプルサーマル実施を目指す
・事業者間のプルトニウム交換等による消費などプルトニウムの確実な消費を進めていく
旨の発言がありました。
五点目の「特定放射性廃棄物の最終処分と搬出期限の遵守について」は、武藤経済産業大臣から、
・青森県を特定放射性廃棄物の最終処分地にしないとの約束は認識しており、引き続き遵守していく
・日本原燃で貯蔵中の高レベル放射性廃棄物の貯蔵期限の約束が、間もなく残り二十年となることを認識しており、事業者がこの約束を遵守するよう国として指導していく
・文献調査地区の更なる拡大に向け、国主導の働きかけを強化するなど、可能な限り早期に最終処分地に関する目処がつけられるよう最善を尽くしていく
旨の発言がありました。
林電気事業連合会会長からは、
・青森県を特定放射性廃棄物の最終処分地にしないとの確約は引き続き遵守する
・最終処分は日本全体での議論が不可欠であり、北海道の文献調査報告書の法定プロセスも踏まえ、国やNUMOと連携し、対話活動・情報発信に取り組んでいく
・ガラス固化体の一時貯蔵期間は三十年から五十年としている中、来年には最初の受入れから三十年を迎え、残りの期間が二十年となることをしっかりと認識したうえで、引き続き搬出期限遵守のための取組を検討し、搬出期限を遵守する
旨の発言がありました。
六点目の「共創会議を受けた取組方針について」は、武藤経済産業大臣から、
・共創会議で本年十月に地域と原子力施設が共生する「将来像」と「工程表」を取りまとめたことで、立地地域と事業者、国が一体となって取り組む土台ができた
・今後、その具体化が重要であり、共創会議で進捗をフォローアップしつつ、関係省庁と連携し、事業者と一体となって進めていく
旨の発言がありました。
あべ文部科学大臣からは、
・十月の共創会議の取りまとめでは、原子力人材の確保・育成や研究開発拠点の整備が位置付けられており、引き続き地元とよく相談しながら、取組を進めていく
旨の発言がありました。
林電気事業連合会会長からは、
・私どもの事業は、社会及び地元の皆様との信頼関係の構築が最も重要であり、地域振興へ協力していく
・原子力施設が稼働することによる地域経済への貢献、共創会議での工程表の項目の実現に向け、立地地域と対話を行い、積極的に取り組んでいく
旨の発言がありました。
最後に、私から改めて林内閣官房長官に対し、
・原子力・核燃料サイクル政策の推進と六ケ所再処理工場のしゅん工、中間貯蔵後の使用済燃料の搬出先の確保について
・最終処分の実現と高レベル放射性廃棄物の搬出期限遵守について
・共創会議で取りまとめた各取組の実現について
政府一体の取組を確認したところ、林内閣官房長官から、
・原子力・核燃料サイクルの推進は、一貫した国の基本的方針であり、六ケ所再処理工場のしゅん工に官民一体で取り組んでいく。また、中間貯蔵された使用済燃料は六ケ所再処理工場に搬出する方針の下、六ケ所再処理工場の長期利用を進めていく
・青森県を最終処分地にしない旨の約束は現内閣でも継承しており、国が前面に立ち、かつ、政府の責任で最終処分の実現に向けた取組を加速させていく。また、高レベル放射性廃棄物の貯蔵期限の約束が間もなく残り二十年となることは認識しており、事業者がこの約束を遵守するよう国として指導していく
・原子力施設の立地を受け入れてきた地域の歴史と思いを重く受け止め、共創会議で取りまとめた取組の実現に政府一体で取り組んでいく
・引き続き、安全性確保を第一に原子力政策を進めていく
旨の発言がありました。
私といたしましては、核燃料サイクル協議会において林内閣官房長官をはじめとする関係閣僚、また、林電気事業連合会会長から責任ある立場で前向きな御回答を頂いたと受け止めております。
以上、御報告といたします。
「青森新時代の挑戦」
県民の皆様にとって、青森県がすばらしい郷土であると再認識いただくとともに、全国に、世界に誇れる青森県を実現していく。県民の皆様とともに私たちは挑戦していきます。
私は知事就任以来、県民の皆様の声に真摯に耳を傾けることを第一に県政運営を行ってきました。
これまで県内各地で実施してきた県民対話集会「#あおばな」は通算百回を超えました。働き盛りの世代から高齢者の方、さらには小学生から高校生など幅広い年代の方々と、そして、農林水産、建設、観光、医療、福祉、地域づくり、本県にゆかりのある県外団体など、様々な仕事や活動をされている皆様と膝を突き合わせ、今直面している足元の課題から未来の展望まで、いろいろなお話をさせていただきました。
私は、県民の皆様の生の声から本質的な課題を見いだすことを政策立案において特に重視しています。また、そういった課題に対し、外部の専門家を含めた様々な御意見等も取り入れ、閉塞感を打破するための着想を得るというプロセスも重要であると考えています。
「#あおばな」のみならず、こども・子育て政策においては、令和五年八月に青森県こども未来県民会議を立ち上げ、幼いお子さんの子育てに奮闘されている方、教育関係に従事されている方、医療関係の方などからお話を伺いながら検討を重ね、昨年十月にこども・子育て「青森モデル」を策定しました。
自然・地域と再生可能エネルギーとの共生制度においては、環境政策、税制、再生可能エネルギー、生態系の有識者や地元自治体の方々から、幅広い観点で御意見を頂き、制度案を策定しました。
このほか、教育改革有識者会議における御提言、ホタテガイ総合戦略チームにおける産学官が連携した検討。
大切なのは、頂いた御意見を踏まえ、今やるべき施策、将来的に取り組んでいくべき施策について明確なビジョンに落とし込み、具体的な取組を進めていくことです。
また、緊急的な課題に対しては、常に現場感覚で県民の皆様の元に足を運び、声を聞き、スピード感を持って対策を実行していくことが大切です。今冬の大雪被害、りんごの結実不足、ホタテの高水温被害などに対し、迅速に対応策を打ち出し、時として市町村の調整役となり、国等に対しても協力を求めていく。そうすることで信頼され、頼られる青森県になり、本当にここに住んで良かったと実感していただけるようにしていきたいと思います。
そして、私は県政における各種課題の解決に当たって、前例踏襲のやり方を見直し、青森大変革とも言うべき世界観を変えるような新しいアプローチを模索する努力も必要だと考えています。
世界の潮流を取り込み、質の高い雇用を生み出すような企業の集積。人口減少や医師不足、高齢化社会といった地域医療に係る課題を克服していくためのオンライン診療の推進。少子化社会における教育の多様性を確保し、こどもたちの希望を叶えるための教育DXの推進。地域の賑わいや交流を創出するスポーツ施設や情報発信機能も兼ね備えた研究施設の整備。青森県が変わり始めていると内外から評価されるような新機軸の政策に取り組んでいきます。
今、多くの若者が卒業を機に、より所得の高い仕事や新しい可能性を求めて県外へ流出していきます。仕事づくりが本県にとって最優先の課題であり、これについては様々な施策を講じていきますが、一方で、若い人たちにとって青森県には何もない、青森県では何もできないという刷込み、あるいは諦めから脱却していくことが重要だと考えています。青森県も世界の一部であり、青森県が変わっていくことで世界を変えることができると思っています。
「青森から始める挑戦」
届けていただいた声をしっかりと形にすること、そして、本当に困っている方々に寄り添い手を差し伸べることで信頼され、頼られる青森県に変わっていく。全国で、世界で評価されることで存在感を高め、青森県でも何かできる、青森県だからこそできることがあるという自信を深め、県民の皆様にとって誇れる青森県に変わっていく。
変わっていく青森県の未来に県民の皆様が希望を持てるよう、青森新時代の挑戦を始めます。
それでは、議案第一号「令和七年度青森県一般会計予算案」について御説明申し上げます。
令和七年度当初予算においては、県民対話集会「#あおばな」などにおける県民の皆様からの声に応えるとともに、「青森県基本計画『青森新時代』への架け橋」をはじめこれまで示してきた様々なビジョンの実現に向けて、県民目線で各種課題のブレイクスルーに挑戦することとしています。
GX(グリーン・トランスフォーメーション)青森の推進による新たな産業の創出、未来への投資としてのこども・子育て「青森モデル」や学校教育改革の推進、オンライン診療の普及・拡大、「地域モビリティ2・0」の推進、高齢者・障がい者が安心して暮らせる共生社会づくり、ボールパークやりんごイノベーションセンターの整備など、県民の皆様が全国に誇れるような新機軸の施策を展開していきます。
年間総合予算として編成した令和七年度一般会計当初予算の規模は、七千九十五億円、令和六年度当初予算対比七十三億円、一・〇パーセントの増となりました。
また、各種財源の確保や有効活用などにより、当初予算において財政調整用基金の取崩額をゼロとする収支均衡を継続するとともに、県債残高についても着実に縮減することといたしました。
以下、令和七年度の主要事業について、一体として編成した令和六年度二月補正予算に係る事業も含め、「青森県基本計画『青森新時代』への架け橋」における「しごと」、「健康」、「こども」、「環境」、「交流」、「地域社会」、「社会資本」の七つの政策テーマに沿って御説明いたします。
一つ目の政策テーマ「しごと」では、「しごとづくりと若者の定着」に挑戦します。
人口減少、少子高齢化社会、こどもを産み育てやすい環境づくり。県政の重要課題に対し、共通して必要となる政策は、若い世代が県内で十分な所得と働きがいを得られる魅力ある仕事づくりです。
目玉となる施策がGX青森の推進です。世界の潮流として、カーボンニュートラルと経済成長の両立を目指すグリーン・トランスフォーメーションは、新たな生産拠点の整備に向けた投資の進展、経済波及効果や良質な雇用の創出と人材定着などが見込める大きな可能性を持った分野であると考えています。
昨年の「青森県・立地地域等と原子力施設共生の将来像に関する共創会議」で決定された「地域の将来像の実現に向けた基本方針と取組」においても、新たな企業誘致の取組が位置付けられ、国、立地自治体、事業者等が一体となって取り組んでいくことが確認されました。
GX青森の推進については、各地域に存在するエネルギーの特性や優位性を生かしていくことが重要です。青森港、津軽港及び西海岸における洋上風力関連産業、八戸港における水素・アンモニア関連産業、上北地域や下北地域における原子力関連産業やむつ小川原地域におけるフュージョンエネルギー関連産業など、各地域の特性や優位性を生かした企業の誘致や産業の集積に戦略的に取り組んでいきます。
そして、今後成長が期待される半導体関連産業については、国内外からの戦略的な誘致に向けた調査検討と台湾企業等をターゲットとしたプロモーション活動を行うこととしています。
また、県内中小企業にとってもビジネスチャンスとして捉え、GX推進に向けたアドバイザーの派遣や研修会の実施、さらには新製品や新技術の開発に対して支援することとしています。
企業誘致の推進については、工業団地に係る産業立地促進費補助の雇用要件の緩和を図り、企業投資と分譲の促進を図るほか、若者にとって魅力ある仕事づくりと子育てしやすい雇用環境創出に向け、IT関連産業の誘致への支援について東北トップクラスの雇用奨励費を設定するなどニーズに応じた見直しを行うこととしました。
本県の経済と雇用を支える中小企業については、賃上げの流れや引き続く物価高騰の中、適切な価格転嫁に向けたアドバイザーの派遣と販売力・収益力の強化や経営コスト削減に向けた支援を行うこととしています。
このほか、県民の所得向上をテーマに、私と若手経営者や金融機関などの方々と今後の方策等について議論を重ねるラウンドテーブルを開催し、県全体での議論を深めるという新しい試みも実施していきます。
農林水産業においても、所得向上にこだわった政策を進めていきます。
農業者の所得向上を実現するために、ICTを活用した経営分析等の指導体制を強化するとともに、農業者の意欲的・計画的な取組についてソフト・ハードの両面からの成果連動型の支援を行います。
本県の農林水産業は生産面において強みを持っている一方で、ながいも、ごぼう、だいこん、にんにくなどの加工需要に十分対応しきれておらず、獲得できる付加価値が流出している状況にあります。関係団体の皆様の声も踏まえ、一次加工の強化に向けて、新たに最終製品製造者のニーズを研究し、フードバリューチェーンの構築に向けた実証に取り組んでいきます。
食品製造業等の付加価値向上については、更なる成長が期待できるアグリ関連産業におけるサプライチェーン構築に向けて、県内企業の参入ニーズを調査するとともに、農業法人等の生産性向上に向けた共同研究や最終製品のブランディングに取り組むこととしています。
また、本県農業の持続的な発展に向けて、新たな担い手の確保を図るため、企業の農業参入に向けたアプローチと受入態勢づくり、りんご産業への参入支援などを実施していきます。
ながいも生産については、面積当たりの収穫量と品質の向上に向け、産業技術センターに、ながいも種苗の冷蔵施設を整備し、種苗増殖をむかご方式から切いも方式へと大転換を図りたいと考えています。
畜産業においては、生産コストの上昇等が続く中、特に雌子牛の価格が全国平均を下回って推移していることから、ゲノミック評価の推進による市場価格の向上と優秀な雌子牛の繁殖への導入促進による生産構造の転換を進めていきます。また、津軽地域のもみ殻、稲わらなどを県南地域の畜産の敷料や飼料として利用するための仕組みづくりについても取り組んでいきます。
りんごについては、令和七年が本県におけるりんご植栽百五十周年となることから、市町村や関係団体と連携した記念式典の開催や全国への情報発信等を行い、更なる認知度向上に取り組んでいくこととしています。また、生産面では、引き続き結実確保のための受粉環境の改善や、モモシンクイガ被害の防止に向けた交信撹乱剤の使用に対する支援も実施します。
仮称「りんごイノベーションセンター」の整備については、現在基本設計を終え、来年度改築工事に着手することとしています。国内外の研究機関との共同研究等を行うためのオープンラボや、新品種開発、害虫管理技術開発など高度な研究機能を備えるだけではなく、特徴的な外観に象徴されるようなりんごに関する情報発信機能の強化を図ります。
林業については、外材中心のマーケット構造を転換し、県産材の利用促進を図るため、県産材利用推進事業者の登録制度を創設するとともに、製材事業者の生産性向上の取組に対して支援を行うこととしています。
水産業については、採苗不振や高水温によるへい死の危機を乗り越え、ホタテガイ養殖・加工業を三百億円産業へと成長させるため、昨年十月に策定した「陸奥湾ホタテガイ総合戦略」に基づき、効率的な採苗や高水温へ対応するための養殖技術開発や高性能のブイロボの整備、協業体制の構築をはじめとする経営力の強化、EUへのベビーボイルホタテの輸出などに取り組んでいきます。
また、若者の県内定着に向けては、今年度設立したあおもり人材育成・県内定着促進協議会において、県内就職を希望する学生が学年の進行とともに減少していることや、特に女性の転出者が多いことなどの課題を共有したところであり、新規学卒者の県内就職を促進するため、若者・女性のニーズに対応した仕事と生活の魅力の情報発信や企業側の採用力とPRの強化について、産学官の連携により取り組むこととしています。
二つ目の政策テーマ「健康」では、「医療環境の向上と共生社会の実現」に挑戦します。
県民の誰もがどこにいても同じ水準の医療が受けられる環境づくりに向け、鍵となるのがオンライン診療をはじめとした医療機関のICTの推進だと考えています。本県におけるオンライン診療の実施は全医療機関・診療所の六・五パーセントにとどまっており、県内医療機関から導入に係る初期投資がネックとなっているという声もお聞きしました。
そこで、各医療機関においてオンライン診療に必要となる機器等の整備について、国庫補助金の活用に加えて、本県独自の支援を追加し、集中的に導入を促進することとしています。また、弘前大学附属病院等が地方病院と連携して実施するICUや周産期医療等の遠隔診療についても後押しすることとしています。さらに、へき地医療の分野においても、拠点病院がオンライン診療により診療所を支援する実証モデルの構築や市町村におけるICT活用の取組を促進するほか、救急医療の分野において、救急搬送受入病院が他の病院や消防と患者のデータ等を共有するためのモバイルICTの導入を進めます。
こうした取組により、医療機関から遠い地域に住む方や高齢者の通院の負担などを少しでも軽減したいと考えています。
医師確保については、人口十万人当たりの医師数は増加しているものの、全国と比較していまだに医師少数県となっており、地域的な偏りも見られます。
来年度、弘前大学におけるキャリア形成プログラムが適用される学生が卒業を迎えるに当たり、医師本人の希望と地域のニーズに応えられるよう、弘前大学に地域医療支援センター分室を設置し、効果的なプログラムを策定していきます。また、今年度から医師修学資金の貸与枠を大幅に拡充したところですが、来年度はさらに東北医科薬科大学との連携による県内定着に向けた新たな支援枠を創設することとしています。
看護師確保については、養成所卒業者の県内就職率が全国と比較して低いという現状に対し、今年度から看護師等修学資金の貸与枠を大幅に拡大したところです。来年度は、県立保健大学に県内就職コーディネーターを配置し、医療機関等と連携して県内就職の促進を図るほか、看護師を含めた医療福祉分野における学生の県内定着を促進するための検討会を開催し、効果的な情報発信の横展開を図ることとしています。
このほか、薬剤師については人口十万人当たりの病院薬剤師数が全国最下位という現状を踏まえ、地域医療の維持・確保に必要な県内病院における薬剤師の確保・定着を図るため、奨学金の返還支援制度を創設するほか、中高生を対象とした体験授業や県内出身者のUIJターン促進のための進路相談会などを実施することとしています。
平均寿命の延伸に向けては、とりわけ本県の死亡率の一番の要因であるがんと二番目の要因である心疾患の改善が課題です。
がんについては生活習慣の改善である一次予防に加え、二次予防であるがん検診による早期発見・早期治療が重要です。特に就労者が多い四十代から五十代の死亡率が高い一方で、小規模事業者等においては十分にがん検診が実施できていないことから、職場における健康診断とセットで市町村の大腸がん検診を受診できるようにするための新たな体制づくりに取り組みます。
また、今年度に引き続き、がん検診初回精密検査の費用への支援について、市町村と連携して実施していきます。
このほか、市町村からの御要望等を踏まえ、がん患者の方のQOL向上のため、罹患前と同様に日常生活を送るための医療用ウィッグや補整下着などの購入費用を助成する市町村の取組を新たに支援します。
心疾患や脳血管疾患は本県における死因の二割以上を占めていますが、その発症につながる前段階である高血圧症等について、治療を必要としながら治療を開始していない方の割合が約四割と非常に高くなっています。そこで、高血圧症未治療者への受診動機付けキャンペーンの実施や医療関係者への治療基準等の周知を行い、患者・医療従事者への適切な受療・治療につなげていきます。
高齢者が生きがいを持ち、安心して暮らせる環境づくりに向けては、介護の現場における人材確保が喫緊の課題とされる中、ロボットやICT等のテクノロジーを活用し、事業所における業務の効率化、職員の負担軽減を支援していきます。また、持ち上げない、抱え上げない、引きずらないノーリフティングケアの推進に向けた意識啓発や研修等を行うことで、介護職員と利用者双方の安全・安心を目指していきます。
高齢者の健康づくりや生きがいの創出に向けたつどいの場づくりについては、アクセスなどの課題に対応した老人クラブ等の送迎モデルの創出に引き続き取り組むほか、ゲーム機を使用したシニアスポーツ大会の更なる充実、保健師など専門職の活用促進に取り組んでいきます。
また、障がい者等が安心して暮らせる社会づくりに向けた第一歩として、今年度、配慮が必要な方の駐車スペースの適正利用を図る「青森県思いやり駐車場制度」を創設したところであり、来年度は障がいのある方もない方も共に暮らしやすい共生社会づくりを目指した条例制定に向けて取り組んでいきます。
このほか、身体障がい者福祉センターねむのき会館についても改築工事を進めていきます。
三つ目の政策テーマ「こども」では、「青森モデルの実現と教育改革」に挑戦します。
昨年十月に策定したこども・子育て「青森モデル」は、公募等により選ばれた青森県こども未来県民会議のメンバーとの直接の対話で得られた生の声やアンケート調査等に基づく子育て世帯等の御意見を集約し、一人ひとりの希望や不安の声に応える政策を具体化していくプロセスとしてまとめたものです。
「青森モデル」においては、青森県で結婚し、こどもを産み育てることに希望を持っていただくことで合計特殊出生率の向上を図るという目標を掲げるとともに、若い世代の人口移動による増加に取り組み、十五歳から四十九歳の人口の純移動率の向上を図ることを目標としています。
この二つの目標に対し、「若者や女性の定着・還流」、「家庭と仕事の両立」、「出会い・結婚」、「妊娠・出産」、「子育て環境」の五つの政策を柱として取組を進めていくこととしています。
「若者や女性の定着・還流」については、政策テーマ「しごと」で申し上げた若者・女性の県内定着に向けた取組のほか、政策テーマ「地域社会」における移住やUIJターンなど還流に向けた取組を進めていきます。
「家庭と仕事の両立」については、子育てに取り組みやすい職場環境の整備など企業を含めた社会全体での取組が重要です。働きやすく魅力ある職場づくりに向け、県内企業の経営者の意識改革や休業しやすい体制構築に向けたアドバイザー派遣などを行うとともに、特別保証融資制度においても、くるみん認定企業やあおもり若者定着サポート企業が行う前向きな取組について、保証料補助を拡充し、支援することとしています。
また、県民の皆様からの声も踏まえ、夏・冬休み期間におけるこども食堂等への県産食材の提供を通じた子育て世帯への支援と学校給食において他地域の地元食材を一品プラスする取組を通じた食育推進を実施することとしています。
「出会い・結婚」については、市町村と連携して実施しているマッチングシステムの会員数増加に向けたプロモーション強化のほか、結婚新生活に関する経済的な支援を実施することとしています。
「妊娠・出産」については、今年度、生殖補助医療による不妊治療の自己負担分について全額支援する制度を創設したところですが、医療機関や治療者の方から頂いた御意見を基に、来年度は一般不妊治療まで支援を拡大し、経済的負担を軽減したいと考えています。なお、都道府県単位での両治療に対する全額支援は全国初の取組となります。
このほか、妊産婦が遠方の医療機関で健診や分娩を行う際の交通費、宿泊費への支援も行うこととしています。
「子育て環境」については、今年度十月から開始した学校給食費等無償化に係る市町村交付金について、来年度は通年分として支援するとともに、市町村がより無償化政策を進めやすいよう給食費以外の無償化についても交付率を十分の十とするなど制度の弾力化を行うこととしました。また、食材価格の高騰等を踏まえ、臨時的に単価を引き上げる対応を図っています。
保育士・保育所支援の充実については、保育士の給与引上げや保育補助者の配置等の処遇改善、保育従事者の就職相談や再就職のコーディネート、相談窓口の設置、保育園の遊具等の整備への支援などを実施することとしております。
急なこどもの預入れや社会参加、リフレッシュ機会の増加を図るため、ベビーシッター制度の普及拡大について多くの御意見を頂いたところであり、新たにキッズシッター・病児シッターの利用者への支援を実施することとしています。
また、急な病気への対応として、現在、救急外来や電話によるこども医療相談などが実施されているところですが、自宅でも受診できるよう夜間・休日における小児科オンライン診療の体制整備を図っていきます。
このほか、子育て環境の充実を図るため、県立の全ての文化施設について高校生以下の入館料等を無償化することとし、今年度途中から実施している美術館に加え、令和七年度から三沢航空科学館、白神山地ビジターセンター、浅虫水族館、三内丸山遺跡センターで実施することとしました。なお、各種施設のこどもの料金無償化に当たり、関連する条例改正案をそれぞれ提案いたしております。
「子育て環境」については、ソフト面での取組に加え、ハード面でも子育てに配慮した歩道や道路・河川の休憩施設におけるおむつ交換台の設置など環境整備を図っていきます。
「青森モデル」の実現に向けては、これらの政策に係る県の取組だけではなく、市町村、企業・団体がそれぞれ主体的な立場で、かつ相互に連携しながら、さらには国からも必要な支援を得つつ、社会全体で取り組んでいきます。
様々な環境にあるこどもについては、こどもの居場所の設置や機能拡充を促進するため、新たに備品購入等に対する支援を行います。また、医療的ケア児については、小児在宅支援センターにおける相談支援等を実施するとともに、受入可能な事業所の増加に向けた取組や特別支援学校における通学支援の試行的実施などの取組を進めていきます。
学校教育改革の推進については、青森県教育改革有識者会議において活発な御議論をいただき、昨年十月には、「学校の働き方改革、教職員のウェル・ビーイング向上」、「教育DX、学びの環境アップデート」、「学校の経営力強化」のための追加の取組方策と、更なる教育改革を推進するための基盤強化として、「教育DXのための環境整備」や「内発的な校内改革に向けた伴走支援」などについて御提言を頂いたところです。
これらの御提言を踏まえ、まず、「学校の働き方改革」については、教員が児童生徒への指導等に注力できるよう、授業の準備等の補助を行うスクールサポートスタッフの配置について充実強化を図り、全ての県立高校へ配置するほか、公立小中学校については配置時間を拡充するとともに、複数の学校での兼務体制を見直し、一校一人の配置体制を整備することとしています。
このほか、いじめ・不登校などの問題行動や児童生徒の心理面での問題などについて教育相談を実施する外部人材などについても配置の拡充を図ることとしています。
また、市町村立小中学校における働き方改革を進めるための環境整備への支援にも引き続き取り組んでいくほか、生徒・保護者の利便性向上と教職員の事務負担の軽減を図るため、県立学校の入試に係るウェブでの出願システムを導入していきます。
そして、教員の確保に向けては、これらの働き方改革の取組に加え、教員の仕事の魅力発信、リクルート活動やUIJターンによる他県からの採用の強化、退職者や経験のない教員免許状保有者といった人材活用の取組を進めていきます。
「学びの環境アップデート」については、県立高校や特別支援学校において地域の関係機関と連携しながら本県の課題や可能性を主体的に探究する取組や、公立小中学校において、不登校児童生徒が自身のペースで学習・生活するための校内教育支援センターの設置を促進するほか、教員に対する研修を実施することとしています。
「学校の経営力強化」については、県立学校における学校運営協議会の導入や地域と学校の協働活動の活性化を一体的に推進していきます。
「教育DXのための環境整備」については、新たな取組として生徒の多様なニーズに応じた学びを提供するため、総合学校教育センターに遠隔教育配信スタジオを設置し、県立高校で遠隔授業等を実施するための環境整備を行い、小規模校においても大学進学に向けた高度な授業などを実施できるよう取り組んでいきます。
また、県立学校において、校務システムやデジタル教材のクラウド化を進めるとともに、児童生徒・保護者・学校が一体となった教育活動を展開するため、教育データを集約・可視化した教育ダッシュボードの基盤を整備することとしています。児童生徒や保護者にとって学習の進捗や理解度などが把握しやすくなることで、学習意欲の向上や学校生活の充実、家庭における関心の向上などが期待されます。
公立小中学校においては、ICT教育推進のための一人一台情報端末等について計画的な更新に向けた支援を行います。
「内発的な校内改革に向けた伴走支援」については、自発的、主体的な教育改革を推進するため、学校経営力の強化に向けた外部コンサルタントの活用による伴走支援を行います。
四つ目の政策テーマ「環境」では、「脱炭素社会の実現と自然との共生」に挑戦します。
国のエネルギー基本計画に基づき、電力の構造転換を図るため再生可能エネルギーの普及拡大が進められており、風力発電など再生可能エネルギーの立地拠点となっている本県においても更なる開発が進められる中、共有財産である健全で恵み豊かな自然環境、景観、歴史・文化等を守り、これを良好な状態で次世代へ引き継いでいかなければなりません。
そこで、昨年度公表した「自然環境と再生可能エネルギーとの共生構想」に基づき、今年度、立地地域と再生可能エネルギーが持続可能な形で向き合い、共存共栄していくためのルールづくりについて、有識者会議をスタートさせ、活発な議論を行ってきました。そして、ゾーニングと合意形成手続により引き継ぐべき環境を保全し、持続可能な形で再生可能エネルギーの円滑な導入を図ることとし、議案第十九号「青森県自然・地域と再生可能エネルギーとの共生に関する条例案」とその政策効果・実効性を補完するための議案第十八号「青森県再生可能エネルギー共生税条例案」を提案しているところです。
こうしたルールづくりと併せて、共生制度の円滑な運用に向け、県民や事業者への制度周知・普及啓発を図るとともに、市町村における共生区域の設定・事業認定等を行うための協議会の運営等について支援を行っていきます。
カーボンニュートラルの達成に向けては、本県では「青森県地球温暖化対策推進計画」に基づき、二〇三〇年の中間目標に掲げる温室効果ガス排出量の削減に取り組んでいるところですが、地球温暖化防止の取組と併せて、県民や事業者のエネルギー費用の負担軽減につなげるなど、環境と経済の好循環を創出し、地域が持続的に発展していくための地域脱炭素に向けた取組が求められています。
こうしたことから、市町村における地域脱炭素の取組を促進するためのトップセミナーの開催や専門家等のチームによる実行計画の策定等に係る伴走支援を実施します。また、中小企業が脱炭素経営に向けて一体となって取り組むための新たなコンソーシアムを設立し、脱炭素スクールを開催するなどの支援を行います。
豊かな自然環境と多様な生態系の維持に向けて、野生鳥獣の対策は喫緊の課題です。
一昨年、出没・人身被害件数が過去最多を更新したツキノワグマについては、令和六年においても高水準で推移しており、今年度から特定鳥獣保護管理計画の策定に着手したところです。来年度は生息動態調査を行い、専門家からの意見も伺いながら計画を策定するとともに、ニホンジカ・イノシシといった大型獣に関してもデジタル技術を活用した新たな捕獲技術の実証・普及に取り組みます。
また、ハンターの減少及び高齢化が進んでいることから、狩猟免許新規取得者の確保に向けた魅力発信や育成のための研修会、さらには資格取得や猟銃購入費等への支援を新たに実施するなど、県内各地で将来にわたって持続的な捕獲が可能となる体制の構築を目指していきます。
五つ目の政策テーマ「交流」では、「国内外とつながる交流・物流の拡大」に挑戦します。
少子化に伴う人口減少やモータリゼーションの進展により、地域公共交通の利用者数は年々減少し、さらには運転手等の人材不足も相まって鉄道や路線バスなどの地域公共交通は厳しい状況にあります。日常生活の足として、また観光やビジネスなどの移動手段として、持続可能なサービスを維持するためには新しいアプローチで課題解決を図る必要があります。
こうした課題解決の取組を「地域モビリティ2・0」として位置付け、県内地域交通全体に「簡単に探せる・移動手段を選べる・迷わず乗れる」といった大変革を目指していきます。
具体的な取組としては、約六割が経路検索に対応していない県内のバス路線について、データ整備を行い、いつでもどこでもスマートフォンがあれば県内の行きたい場所までの公共交通ルートを検索できるといったシステムを整備し、利便性向上による利用促進を図ることとしています。
市町村における域内交通については、今後のあり方を示す計画策定の支援を行うとともに、路線再編や運賃・ダイヤの見直し、さらには弘南鉄道大鰐線休止後の代替交通について関係者と連携しながら検討を進めていきます。また、交通が不便な地域・時間帯における移動手段確保のため、引き続きアオモリモビリティシェアの実証のほか、複数の交通モードや他分野との連携によるMaaS実装に向けた取組も進めていきます。
バス、タクシー、鉄道などの運転手不足の課題解決に向けては、交通事業者が行う採用活動と労働環境改善のための取組について支援を行うほか、人材確保に向けた事業者間の連携を促進していきます。
特に厳しい状況にあるローカル鉄道については、利用促進や相互連携に向けた会議を発足させるとともに、遠足や校外学習などの教育旅行に係る運賃を無償とする取組への支援や多言語に対応した情報サイトの開設などに取り組みます。また、民営鉄道について専門コンサルタントによる調査を行い、広域交通の維持に向けて沿線地域との検討を進めていきます。
観光分野の新しい取組としてはAI観光案内の構築が挙げられます。多様化するニーズに応え、本県が観光地として選ばれるため、多言語に対応し、二十四時間三百六十五日、生成AIにより一人ひとりのニーズに応じた観光ルートを提案するなど高い水準のシステムの構築を目指します。
また、本県の課題である冬季観光については、観光事業者の年間を通じた経営と雇用の安定化のため、更に底上げを図る必要があります。観光事業者が主体となって実施する宿泊キャンペーンについて利用促進を図るほか、宿泊の利用から周辺の飲食店や土産物店等への周遊につなげる割引や特典のキャンペーンを地域と一体となって実施します。
このほか、来年度、北海道新幹線開業十周年を契機としてJR東日本等と連携し、青函周遊観光の認知度向上・定着化に取り組んでいきます。
昨年一月から十一月までの十一か月間だけでも外国人延べ宿泊者数は初めて年間四十万人を超え、まさに青森インバウンド新時代の幕開けと言えます。本県経済の更なる活性化が期待されるところであり、宿泊者数と観光消費額の増加を図るため、提供するコンテンツの内容や発信の手法について各国の特徴を踏まえた戦略的な誘客対策を講じていきます。
国際線の路線維持・拡大に向けては、青森空港における運航体制をしっかりと維持するとともに、昨年十月に運航が再開し、今後飛躍が期待できる青森・台北線について、幅広い年代にアプローチした利用促進を図ります。また、昨年一月に運航が再開した青森・ソウル線については、来年度の就航三十周年を契機とした利用促進キャンペーンを実施するとともに、若い女性層をターゲットにSNSを活用した情報発信などを強化していきます。
輸出の分野については、本県農林水産品の輸出の九割以上がアジア向けであり、県産品の更なる輸出拡大を図るためには新規市場の開拓が必要です。このため、EU向けの新たな輸出のパートナーをリサーチするほか、アメリカ、香港、シンガポールといった地域ごとのマーケットに応じたプロモーションや東南アジアへの輸出に向けた事業者のハラール等の国際認証の取得促進などを行っていきます。
また、国内取引を中心に実績を伸ばしている「エー・プレミアム」については、本年四月から西日本へ集荷翌日に配達できる仕組みを整え、販路拡大と需要の定着を図るとともに、青森空港での通関の強みを生かし、香港、台湾、シンガポール、タイなどでの販路開拓に取り組んでいきます。
六つ目の政策テーマ「地域社会」では、「県民総参加の地域づくり」に挑戦します。
いよいよ来年一月から、青の煌めきあおもり国スポ冬季大会が始まり、八戸市、三沢市、大鰐町、秋田県鹿角市で、スケート、アイスホッケー、スキーの各競技が行われます。
また、令和八年十月の国スポ本大会及び障スポの開催に向けては、県民総参加に向けた更なる気運の醸成を図るとともに、リハーサル大会の実施や仮設等の対応を含めた各会場の準備など万全の体制を整えていきます。総合開・閉会式を屋内で実施するなど簡素化・効率化等により、参加選手の負担等の軽減を図りつつ、創意工夫により青森県ならではの大会を目指していきます。
そして、今年度の佐賀国スポでは男女の総合成績が二十三位と順位を上げてきたところであり、競技力向上の取組を充実・加速させ、本県開催において天皇杯・皇后杯の獲得を目指すとともに、一過性のイベントとしてではなく、学校、クラブ、企業等の県民のスポーツ活動の底上げを図り、大会後も本県スポーツの活性化につながるよう取り組んでいきます。
障スポについては、障がい者の方に競技だけではなく気運醸成に向けた活動など様々な形で参加いただき、関わって良かったと思ってもらえるような大会にしたいと考えており、政策テーマ「健康」で申し上げた取組を含め、障がい者の方が活躍できる社会づくりを進めていきます。
このほか、令和八年からJリーグの開幕時期の変更に伴い、各クラブのトレーニングキャンプが六月、七月といった夏季に変更されるという機会を捉え、本県の冷涼な気候を生かし、Jリーグクラブキャンプの誘致に新たに取り組み、プロスポーツに親しむ機会の創出と地域の活性化を目指していきます。
文化面の取組については、新たに民俗芸能活性化大会を開催し、記録映像を保存・発信することで、文化の継承に向けた若い世代等への関心の喚起を図っていきます。
本県の人口の転出超過は依然として厳しい状況にありますが、若い世代が将来にわたり安心して青森で暮らしていけるような魅力ある多様な仕事づくりに加え、移住やUIJターンなどの還流に向けた取組が重要です。
首都圏における就職相談窓口を利便性に優れた有楽町に集約するとともに、市町村や首都圏大学との連携強化などに取り組みます。また、若者や女性をターゲットとして本県の暮らしや仕事などについて情報発信するほか、首都圏における本県ゆかりの店舗を交流や情報発信の拠点となる移住サポート店として活用するなど、関係人口の増加を図る取組も始めることとしています。
UIJターン就職については、支援金の利用の増加傾向を踏まえて対応するほか、県内企業と連携した奨学金の返還支援についても引き続き実施していきます。
地域の強みを生かした地域づくりに向けては、本年四月から県民局の廃止に伴い設置する各地域連携事務所において、各地域と連携・協働し、地域の課題解決や新しい価値の創出に取り組んでいきます。
このほか、新しい地域づくりの形として、野球場を核に年間を通じた賑わいや交流を創出するボールパークの整備に向けて基本計画を策定するとともに、整備・運営手法等を比較検討する民間活力可能性調査を実施します。
安心で快適な生活基盤づくりについては、県・市町村・関係機関等が保有するデータを連携し、防災やこども・子育てなどの分野でサービスや政策に活用するための基盤の整備を進めていきます。
また、青森県行財政改革大綱に基づく県庁DXを進めるため、端末のモバイル化などテレワーク環境の整備や生成AIをはじめとした業務改善のためのデジタルツールの導入、ペーパーレス促進のためのソフトウェアの導入などを進めます。
県民の食の安全安心や動物愛護の推進を将来にわたって維持していくため、県獣医師職員が果たす役割は重要であり、安定的に人材を確保するため、修学資金の貸付枠を拡大するほか、処遇改善、情報発信の強化、職場環境の充実を図っていきます。なお、関連する条例案として、提案しております議案第二十五号「職員の給与に関する条例等の一部を改正する条例案」において、県獣医師職員の初任給調整手当の改定を盛り込んでいるところです。
七つ目の政策テーマ「社会資本」では、「産業・災害に強く、しなやかな県土の実現」に挑戦します。
交流・物流の拡大に向けて、本県の経済と生活を支えるインフラ整備を着実に進めていく必要があり、昨年二月に、未来の地域の姿を県民の皆様と共有するため、県内百五十を超える道路及び河川事業等の今後十年間の完成見通しを公表したところです。
下北半島縦貫道路について、来年度むつ南バイパスと横浜南バイパスが全線供用開始するのをはじめ、津軽自動車道、青橅山バイパス、八戸環状線などについても進捗を図っていきます。
また、昨年洋上風力の基地港湾に指定された青森港については、令和十年度からの基地港湾利用を想定し、国と県が連携して国際物流ターミナルの整備を進めるとともに、津軽港についても、O&M(オペレーション・アンド・メンテナンス)港としての整備に取り組みます。
昨年の能登半島地震から一年が経ちましたが、本県は県土全体が三方を海に囲まれた半島のような地形であり、大規模災害時には同様の問題が生じることが懸念されることから、道路等における危険箇所等の防災対策を進めるほか、河川整備等の流域治水に集中的に取り組みます。加えて、国の公共事業の対象とならない道路、河川、港湾についても緊急的な安全対策を集中的に実施していきます。
下北地域広域避難路の整備のほか、下北半島を横断する泊陸奥横浜停車場線の通年通行化や今別蟹田線の小国峠区間の平坦化について、取組を進めていきます。
さらに、除排雪DXについても取組を進めることとしており、専用サイトによる除排雪予定箇所のお知らせを全県に拡大するほか、除排雪管理システムの全県導入や雪山除雪ガイダンスの路線拡大による除雪作業の効率化を図ることとしています。
防災・減災の推進については、能登半島地震で顕在化した課題等を踏まえ、これまでより一段上の自助・共助・公助の強化を図るため、今後五年間で重点的に実施すべき事項について「Aomori防災・減災強化Action Program」としてとりまとめたところです。
このプログラムに基づき、避難所における生活環境の充実を図るため、災害備蓄品を見直し、段ボールベッドやパーティション、さらにはミルクなどの子育て関連用品や大人用おむつなど高齢者等に配慮した品目について新たに備蓄することとしたほか、自動ラッピングトイレやトイレカーなど避難所における環境改善のための資機材等についても導入することとしました。これにより、発災時の良好な避難環境を確保していきます。
また、市町村の災害対応力の向上と地域防災力の強化を図るため、受援計画や個別避難計画の策定等に向けた支援を行うほか、防災教育センターにおいてデジタルツールを活用した教育機能の強化を図ることとしています。
さらに、大規模災害時における県、市町村の公助に限界があることも踏まえ、県民の皆様が防災を「じぶんごと」として捉え、主体的に取り組んでいけるよう、各主体の役割を明確にする防災基本条例の制定についても取り組んでいきます。
これら七つの政策テーマに基づく取組のほか、引き続くエネルギー価格や物価高騰に対し、国の交付金も活用しながら各分野に対する支援策を講じていきます。
農林水産業分野においては、配合飼料の価格高騰により経営が悪化している畜産経営体への支援のほか、子牛生産費の上昇と販売価格の低迷に直面する繁殖農家への支援、燃油や飼料価格高騰の影響を受ける漁業・養殖業者やナマコ種苗生産、サケふ化場、地域排水など公益的な役割も担う農業水利施設の電気料金高騰に対する支援などを実施することとしています。
また、地域公共交通や安定的な物流の確保等に向けたトラック・タクシー・航路に対する支援を実施するほか、中小企業者へのLPガス等に対する支援、料金への転嫁が困難な医療・福祉施設、保育・児童入所施設等に対する支援、私立高校における就学支援の拡充などを行うこととしています。
以上が主要事業の内容であり、県民の皆様に対し、これらの施策がより分かりやすく伝わるような情報発信に努めるとともに、市町村をはじめ、あらゆる主体との連携・協働を強化しながら、青森新時代の挑戦の取組を進めていきます。
次に、歳入予算の主なるものについて御説明申し上げます。
県税については、本県経済の動向、地方税制改正の内容等を踏まえ、千五百五十九億六千百六十万円余を計上いたしております。
地方消費税清算金については、地方消費税の都道府県間における清算金七百十四億八千万円余を計上いたしております。
地方交付税については、原資総額の伸び率及び国の算定方針を基礎に、普通交付税の交付見込額を推計したうえで、当初予算において二千八十六億七千三百万円を計上したほか、特別交付税については、三十四億円を計上いたしております。
県債については、地方債計画、その運用方針等を勘案して積算のうえ、五百二十七億六千百万円を計上いたしております。
このほか、国庫支出金等については、主として歳出との関連において計上いたしております。
以上が「令和七年度青森県一般会計予算案」の概要であります。
このほか、上程されました議案の主なるものについて御説明申し上げます。
議案第二号から議案第十七号までは、特別会計及び企業会計に係る予算案であります。
議案第二十一号「青森県地域県民局及び行政機関設置条例の一部を改正する条例案」は、地域県民局を廃止し、地域連携事務所、県税事務所、環境管理事務所、農林水産事務所及び県土整備事務所を設置するとともに、保健所、福祉事務所、児童相談所及び家畜保健衛生所の名称を改める等の改正を行うものであります。
議案第二十二号「青森県附属機関に関する条例の一部を改正する条例案」は、青森県環境審議会に青森県自然・地域と再生可能エネルギーとの共生に関する条例に基づく事項を調査審議するための部会を設ける等の改正を行うものであります。
議案第二十三号「職員の勤務時間、休暇等に関する条例の一部を改正する条例案」は、育児を行う職員の早出遅出勤務及び時間外勤務の制限について対象となる職員の範囲を拡大するものであります。
議案第二十五号「職員の給与に関する条例等の一部を改正する条例案」は、令和六年十月八日付けの人事委員会からの「職員の給与等に関する報告及び勧告」に基づき、職員の給料月額及び先程申し上げた獣医師職員の処遇改善に係る初任給調整手当の改定等を行うものであります。
議案第三十五号「青森県動物愛護センター使用料及び手数料徴収条例の一部を改正する条例案」は、犬又は猫の譲渡の推進を図るため、譲受けに係る手数料を徴収しないこととするものであります。
議案第四十六号「青森県県営住宅条例の一部を改正する条例案」は、子育て世帯が安心して暮らせる住宅の確保及び結婚に伴う住宅確保の支援の一環として、子育て世帯及び若年夫婦世帯の入居収入基準を改めるものであります。
議案第五十八号「青森県人事委員会委員の選任の件」は、青森県人事委員会委員奥崎栄一氏の任期が来る三月三十一日をもって満了いたしますので、後任の委員として同氏を再任いたしたく、御同意を得るためのものであります。
議案第五十九号「青森県監査委員の選任の件」は、青森県監査委員竹内均氏の任期が来る三月三十一日をもって満了いたしますので、後任の委員として佐々木知彦氏を選任いたしたく、御同意を得るためのものであります。
議案第六十二号「令和六年度青森県一般会計補正予算案」は、先に成立した国の令和六年度補正予算に対応するため、所要の予算措置を講ずるものであります。
次に、専決処分した事項の報告及び承認を求めるの件について御説明申し上げます。
報告第一号「令和六年度青森県一般会計補正予算」は、市町村が実施する生活困窮者向け灯油購入費助成事業に対する支援及び一般家庭等におけるLPガス料金減額に要する経費について、それぞれ所要の予算補正の必要が生じたものです。
報告第二号「令和六年度青森県一般会計補正予算」は、十二月以降の集中的な降雪に伴い、県管理道路の除排雪に要する経費について、予算補正の必要が生じたものであります。
報告第三号「令和六年度青森県一般会計補正予算」は、りんご樹の枝折れ等の被害拡大を防止するため、りんご園地における無人ヘリコプターを使用した融雪促進剤の空中散布を支援するのに要する経費について、予算補正の必要が生じたものであります。
これらはいずれも早急に措置する必要がありましたが、議会を招集する時間的余裕がないことが明らかであると認め、本職において専決処分をいたしたものであります。
それ以外の議案につきましては、各議案の末尾に記載されている提案理由等のとおりであります。
以上、県政運営に関する基本的な方針を申し述べるとともに、提出議案の概要について御説明申し上げましたが、議事の進行に伴い、御質問に応じ、本職をはじめ関係者から詳細に御説明申し上げたいと思います。
なにとぞ、慎重御審議のうえ、原案どおり御議決、御同意並びに御承認を賜りますようお願い申し上げます。
なお、この機会に議長のお許しを得て、第十四回核燃料サイクル協議会の結果について御報告申し上げます。
核燃料サイクル協議会につきましては、これまでも核燃料サイクル政策に係る重要な節目において、本県の要請を受け、国が開催してきたところであります。
今回は、昨年八月の六ケ所再処理工場の二十七回目のしゅん工目標の見直し、十一月のむつ市の使用済燃料中間貯蔵施設の操業開始などを踏まえ、改めて現内閣における原子力・核燃料サイクルの位置付けや中間貯蔵後の使用済燃料の搬出先、高レベル放射性廃棄物の搬出期限遵守、「青森県・立地地域等と原子力施設共生の将来像に関する共創会議」で取りまとめられた将来像の実現に向けた政府一体の取組などについて、確認・要請する必要があると考え、核燃料サイクル協議会の開催を要請いたしました。
昨年十二月二十四日に開催された同協議会では、林内閣官房長官、浅尾原子力防災担当大臣、城内科学技術政策担当大臣、あべ文部科学大臣、武藤経済産業大臣、林電気事業連合会会長に御出席いただきました。
同協議会において、私から、
一 原子力・核燃料サイクル政策の推進について
一 六ケ所再処理工場のしゅん工・操業に向けた取組について
一 リサイクル燃料備蓄センターの中長期の貯蔵計画等について
一 プルトニウム利用について
一 特定放射性廃棄物の最終処分と搬出期限の遵守について
一 共創会議を受けた取組方針について
の六項目について、九件の確認及び七件の要請をいたしました。
一点目の「原子力・核燃料サイクル政策の推進について」は、私から、
・原子力・核燃料サイクル政策の推進
・安全性の確保
・防災対策
・原子力人材育成・研究開発
について確認・要請し、武藤経済産業大臣からは、
・引き続き、原子力・核燃料サイクルの推進を国の基本的方針として堅持していく
・原子力施設の安全性確保に向け、事業者に対し、原子力規制委員会の審査への的確な対応や事業者間連携での技術力向上、自ら安全を追求するマネジメント体制の整備などを指導していく
・原子力利用の基盤である技術やサプライチェーンの維持・強化、人材育成への支援も着実に進めていく
・高速炉は核燃料サイクルの効果をより高めるものとして重要であり、GX経済移行債を活用し、実証炉開発を進めていく
旨の発言がありました。
浅尾原子力防災担当大臣からは、
・リサイクル燃料備蓄センターの将来的なオフサイトセンターについて、青森県と連携し準備を進めている
・引き続き、避難道路や放射線防護対策施設、災害備蓄の充実など原子力災害に関する対策について支援していく
旨の発言がありました。
あべ文部科学大臣からは、
・核燃料サイクルの確立や原子力施設の安全性の向上に向け、原子力分野の人材育成や研究開発の推進は重要であり、高速実験炉「常陽」を活用した研究開発、日本原子力研究開発機構東海再処理施設等の建設・運転を通じて培った基盤技術の日本原燃六ケ所再処理工場への技術移転や技術者の派遣等の支援、さらに、量子科学技術研究開発機構六ケ所フュージョンエネルギー研究所における研究開発、その成果を基に社会実装を担うベンチャー企業二社が昨年青森県内に創業している
旨の発言がありました。
林電気事業連合会会長からは、
・原子燃料サイクルの推進は原子力発電所の安定運転と不可分であり、電力の安定供給に寄与するものと考えており、引き続き使用済燃料の再処理、プルトニウムの利用などしっかりと対応していく
・原子力発電の最大限の活用のために業界で連携しつつ、自主的な安全性向上に取り組んでいく
旨の発言がありました。
二点目の「六ケ所再処理工場のしゅん工・操業に向けた取組について」は、武藤経済産業大臣から、
・今年八月に六ケ所再処理工場が二十七回目のしゅん工目標見直しとなったことは重く受け止めている
・核燃料サイクルの確立に向け、六ケ所再処理工場のしゅん工は、必ず成し遂げるべき課題であり、日本原燃に加え産業界全体にも原子力規制委員会の審査対応における進捗管理の徹底や必要な人材確保を強く指導し、総力を挙げて取り組んでいく
旨の発言がありました。
林電気事業連合会会長からは、
・再処理工場の早期しゅん工に向け、引き続き電力各社から専門知識を有する人材の派遣などを行っていく
・本年十月から電気事業連合会の役員が日本原燃の経営会議に参加し、審査や工事の進捗確認、必要に応じて指導や助言などを行って対策を強化している
・今後もオールジャパン体制で支援していく
旨の発言がありました。
三点目の「リサイクル燃料備蓄センターの中長期の貯蔵計画等について」は、武藤経済産業大臣から、
・むつ中間貯蔵施設について、事業者に対し中長期的な貯蔵計画を早期に青森県に示すよう指導する
・中間貯蔵された使用済燃料について、六ケ所再処理工場へ搬出する方針を先日審議会で提示した次期エネルギー基本計画の原案に盛り込んだ
・事業者に対し、地元との約束である使用済燃料の搬出期限の遵守を強く指導していく
旨の発言がありました。
四点目の「プルトニウム利用について」は、武藤経済産業大臣から、
・プルサーマルについては、電気事業連合会が示している計画も踏まえ、国も事業者と連携し、一層の推進を図っていく
旨の発言がありました。
城内科学技術政策担当大臣からは、
・我が国は「利用目的のないプルトニウムは持たない」との原則を堅持しつつ、核燃料サイクルを推進することとしている
・今後とも、プルトニウムの適切な管理と利用が行われるとともに、サイクルの環の確立がなされるよう引き続き着実に取り組んでいく
旨の発言がありました。
林電気事業連合会会長からは、
・プルサーマルを早期かつ最大限導入することを基本とし、稼働する全ての原子炉を対象に二〇三〇年度までに少なくとも十二基のプルサーマル実施を目指す
・事業者間のプルトニウム交換等による消費などプルトニウムの確実な消費を進めていく
旨の発言がありました。
五点目の「特定放射性廃棄物の最終処分と搬出期限の遵守について」は、武藤経済産業大臣から、
・青森県を特定放射性廃棄物の最終処分地にしないとの約束は認識しており、引き続き遵守していく
・日本原燃で貯蔵中の高レベル放射性廃棄物の貯蔵期限の約束が、間もなく残り二十年となることを認識しており、事業者がこの約束を遵守するよう国として指導していく
・文献調査地区の更なる拡大に向け、国主導の働きかけを強化するなど、可能な限り早期に最終処分地に関する目処がつけられるよう最善を尽くしていく
旨の発言がありました。
林電気事業連合会会長からは、
・青森県を特定放射性廃棄物の最終処分地にしないとの確約は引き続き遵守する
・最終処分は日本全体での議論が不可欠であり、北海道の文献調査報告書の法定プロセスも踏まえ、国やNUMOと連携し、対話活動・情報発信に取り組んでいく
・ガラス固化体の一時貯蔵期間は三十年から五十年としている中、来年には最初の受入れから三十年を迎え、残りの期間が二十年となることをしっかりと認識したうえで、引き続き搬出期限遵守のための取組を検討し、搬出期限を遵守する
旨の発言がありました。
六点目の「共創会議を受けた取組方針について」は、武藤経済産業大臣から、
・共創会議で本年十月に地域と原子力施設が共生する「将来像」と「工程表」を取りまとめたことで、立地地域と事業者、国が一体となって取り組む土台ができた
・今後、その具体化が重要であり、共創会議で進捗をフォローアップしつつ、関係省庁と連携し、事業者と一体となって進めていく
旨の発言がありました。
あべ文部科学大臣からは、
・十月の共創会議の取りまとめでは、原子力人材の確保・育成や研究開発拠点の整備が位置付けられており、引き続き地元とよく相談しながら、取組を進めていく
旨の発言がありました。
林電気事業連合会会長からは、
・私どもの事業は、社会及び地元の皆様との信頼関係の構築が最も重要であり、地域振興へ協力していく
・原子力施設が稼働することによる地域経済への貢献、共創会議での工程表の項目の実現に向け、立地地域と対話を行い、積極的に取り組んでいく
旨の発言がありました。
最後に、私から改めて林内閣官房長官に対し、
・原子力・核燃料サイクル政策の推進と六ケ所再処理工場のしゅん工、中間貯蔵後の使用済燃料の搬出先の確保について
・最終処分の実現と高レベル放射性廃棄物の搬出期限遵守について
・共創会議で取りまとめた各取組の実現について
政府一体の取組を確認したところ、林内閣官房長官から、
・原子力・核燃料サイクルの推進は、一貫した国の基本的方針であり、六ケ所再処理工場のしゅん工に官民一体で取り組んでいく。また、中間貯蔵された使用済燃料は六ケ所再処理工場に搬出する方針の下、六ケ所再処理工場の長期利用を進めていく
・青森県を最終処分地にしない旨の約束は現内閣でも継承しており、国が前面に立ち、かつ、政府の責任で最終処分の実現に向けた取組を加速させていく。また、高レベル放射性廃棄物の貯蔵期限の約束が間もなく残り二十年となることは認識しており、事業者がこの約束を遵守するよう国として指導していく
・原子力施設の立地を受け入れてきた地域の歴史と思いを重く受け止め、共創会議で取りまとめた取組の実現に政府一体で取り組んでいく
・引き続き、安全性確保を第一に原子力政策を進めていく
旨の発言がありました。
私といたしましては、核燃料サイクル協議会において林内閣官房長官をはじめとする関係閣僚、また、林電気事業連合会会長から責任ある立場で前向きな御回答を頂いたと受け止めております。
以上、御報告といたします。